ジュエリーのECにとって、11月から12月は1年で最も売上が動く時期です。当社が昨年広告運用を担当したジュエリーECでは、この時期に、自分へのご褒美に買う人と誰かに贈る人を分けたペルソナ設計と、「1万円以下のネックレス」のように予算から選べる価格帯訴求で売上を作りました。

この記事では前半で、去年の年末年始に何が起き、どの施策が効いたのかを時系列で振り返ります。後半では、その振り返りから見えた課題をもとに、今年の年末年始の作戦を日程・商品・着地先・クリエイティブの順に組み立てます。どちらも、運用チームが今年の作戦会議で話し合った内容をもとにしています。クライアントが特定されないよう、ブランド名は伏せています。

結論:去年効いたことと、今年の作戦

去年の年末年始に成果につながったのは、次の3つでした。

  • 「自分へのご褒美に買う人(セルフギフト)」と「誰かに贈る人」を別のペルソナとして扱い、贈る人はさらに「女性から女性へ」「男性から女性へ」と組み合わせで分けた
  • 「1万円以下のネックレス」「2万円以下のネックレス」のように、予算で選べる訴求を細かいキャンペーンに分けて出した
  • クリエイティブを1ペルソナ×1本あたり月30万円前後までに抑え、広告費から必要な本数を割り出した

一方で、ブラックフライデーのあと12月の頭に売上の谷ができ、成果の多くが直前の1週間に集中しました。そこで今年は、12月10日前後のボーナス支給日にもう1つ山を作ることを軸に、商品の役割分担、広告の着地先、クリエイティブの計画を組み直します。

担当したジュエリーECと、年末年始の位置づけ

担当したのは、ネックレスやピアスを中心に扱うジュエリーブランドです。Shopifyで自社ECを運営し、Google広告とMeta広告で集客しています。

売上の中心ネックレスとピアス(2つで売上の93%)
よく売れる価格帯1万円台のネックレス。単価を取るなら3〜5万円のダイヤモンドリング
去年11〜12月の広告費2か月で約300万円

ジュエリーの年末年始需要には、性質の違う2つの買い方が混ざっています。クリスマスに向けて誰かに贈る買い方と、1年の締めくくりに自分のために買う買い方です。前者は12月の決まった日付に向かって需要が集中し、後者は時期の縛りが弱い代わりに単価が上がりやすい。この2つを同じ広告で一括りにしなかったことが、去年の施策全体の出発点でした。

年末年始の前:セルフギフトのペルソナを見つけた

運用を始めて数か月、配信データを見ていくと、自分のためにジュエリーを買っている層がまとまって存在することが分かりました。それまでは「ジュエリー=贈り物」という前提で広告を組んでいましたが、ここで「セルフギフト」をひとつのペルソナとして独立させています。

このペルソナは年末年始に入る前から成果を出しており、年末年始もこの軸は止めずに残しました。ギフトのペルソナは、その横に足す形を取っています。年末年始だからといって広告を全部ギフト向けに切り替えなかったことが、後で年明けの運用を支えることになりました。

11月:ギフトのペルソナと価格帯訴求を立ち上げた

ギフトは「誰から誰へ」で分けた

年末年始にはギフトの需要があると見て、「女性から女性へ」「男性から女性へ」のように、誰が誰に贈るかでペルソナを分け、それぞれにクリエイティブを用意しました。この分け方は当たり、年末年始の売上を支えています。

1万円以下・2万円以下で切った訴求が最も効いた

去年いちばん手応えがあったのは、価格帯で区切った訴求です。「1万円以下のネックレス」「2万円以下のネックレス」というように、商品の種類と予算の上限をセットにした広告を、キャンペーンを細かく分けて出しました。

プレゼントを探す人は、ほぼ例外なく先に予算を決めています。「ネックレス」だけを見せられても、自分の予算に合う商品があるかはページを開くまで分かりません。広告の段階で「この金額までで選べる」と分かれば、クリックした時点で検討の半分が終わっています。このとき、広告の文言と着地先のコレクションで価格の上限を必ず揃えました。「1万円以下」の広告から、1万円を超える商品が上に並ぶページへは送っていません。

ホリデーの訴求と通常の訴求は、同じペルソナの中で混ぜた

ホリデー専用のキャンペーンを別に立てて通常の配信を止める、という分け方はしていません。1つのペルソナの中に、クリスマスギフトの広告と通常の広告を両方入れておき、日々の数字を見て配分を変えました。12月に入ってギフト訴求の反応が上がればそちらへ寄せ、反応が落ちる時期は通常訴求に戻せるので、機械学習のデータも途切れません。

クリエイティブの本数は広告費から割り出した

年末年始は広告費が膨らむので、同じバナーを出し続けると、同じ人に何度も表示されて反応が落ちます。このブランドでは過去の配信から、1つのペルソナに対する1本のクリエイティブで月30万円を超えるあたりから、フリークエンシー(1人あたりの表示回数)が上がって成果が落ちる傾向が出ていました。そこで、2か月で約300万円の広告費に対して、1ペルソナ×1本あたり10万円前後になるように本数を割り戻しています。

新しい構成サイズ展開
11月6本18枚
12月6本18枚

「新しい構成」は訴求やレイアウトが異なるクリエイティブの数、「サイズ展開」はそれぞれをGoogleとMetaの配信面に合わせて正方形・縦長・横長などに作り直した枚数で、1構成あたり3サイズに展開しています。

ブラックフライデーから12月20日:谷のあとに駆け込みの山

年末年始の売上を日別に並べると、売上の動きは3つの段階に分かれていました。

時期売上の動き
11月下旬(ブラックフライデー)ブランドのフェアもあり、一度上がった
12月の頭ブラックフライデーの反動で大きく落ち込んだ
12月14〜20日クリスマスに間に合わせたい人の駆け込みで売上が立った

成果の多くは、直前の1週間に集中していました。12月頭が落ち込んだ理由として、運用チームでは「ブラックフライデーの時期に、大手モールのセールでプレゼントを買い終えた人が多かったのではないか」と見ています。このブランド自身もブラックフライデーのフェアを開催していたので、ギフトの需要がその時期に前倒しで消化された可能性もあります。

年明け:ギフトの需要が消え、2軸の運用へ

年が明けると、ギフトの需要はほとんど取れなくなりました。一方で、年末年始の前から続けていたセルフギフトの軸は、年明けも成果を出し続けています。

そこで年明け以降は、「セルフギフト」と、そこから派生した「高価格帯の商品を探す人」の2軸に絞って運用しています。高価格帯のペルソナは今もROAS(広告費あたりの売上)を支えています。年末年始にギフトへ全面的に切り替えていたら、この2軸の学習データは途切れていたはずです。

振り返って分かった、効いたことと課題

効いたこと:買う人と予算で広告を分けた

去年の成果は、「誰が買うか(自分か、誰かに贈るか)」と「いくらで探すか」の2つで広告を分けたことから生まれています。どちらも、買う人が最初に決めていることに広告の側から合わせた形です。

課題1:12月の頭に山を作れなかった

ブラックフライデーと駆け込みの間の約2週間は、売上が落ちたまま推移しました。広告は配信していましたが、この期間に「今買う理由」を打ち出せていませんでした。クリスマスまでまだ日があるこの時期は、何もしなければ買う人が様子見に回ります。

課題2:クリエイティブを状況に応じて足していった

先ほどの制作本数は、最初から計画していたものではありません。配信しながら状況に応じて足していった結果で、どの時期にどの訴求を何本出すかを事前に決めていたわけではありませんでした。

見落としていた点:売上シェアと閲覧シェアのずれ

振り返りで新たに分かったのが、商品カテゴリーごとの「売上に占める割合」と「サイト内で閲覧された割合」のずれです。ネックレスは売上シェアに比べて閲覧シェアが低く、反対にリングは閲覧が多いのに売上にはあまりつながっていませんでした。売れる割合が高いのに見られていないカテゴリーは、広告で人を寄せれば売上が伸びる余地があります。閲覧は多いのに売れていないカテゴリーに広告費が流れているなら、その分は無駄になっている可能性があります。

今年の作戦1:山を作る日付を理由とセットで決める

12月14〜20日の駆け込みは、今年も同じように来るとは限りません。この山を落とさないように予算を確保したうえで、去年空いていた12月の頭に2つ目の山を作ります。狙うのは12月10日前後のボーナス支給日です。ギフトを探し始める人が増える時期なので、ここで「◯日までのご注文でクリスマスに間に合います」と配送の締め切りを打ち出し、カタログ広告など購入に近い人へ届く広告を強めます。駆け込みの時期にも同じ締め切りの訴求を出し、2つの山を両方取りにいきます。

時期やること
10月中価格帯別のギフトページを整える。ブラックフライデーのフェア内容をクライアントと確認する
11月の頭クリスマス特集を公開し、ギフトの広告を出し始める
11月下旬ブラックフライデー。フェアの内容に合わせて広告を出す
12月10日前後ボーナス支給日に合わせ、配送の締め切りとカタログ広告で1つ目の山を作る
12月14〜20日駆け込み。去年の山を落とさないよう予算を確保する

ブラックフライデーにどんなフェアを行うかで、11月後半から12月頭の売上の動きが変わります。去年の谷の原因がそこにあると見ているので、内容は10月中に確認しておきます。

今年の作戦2:ボリュームと単価で商品の役割を分ける

去年最も効いた価格帯訴求は、今年も続けます。そのうえで、商品ごとに役割を分けます。

  • 件数を取る:1万円台のネックレス。売上のボリュームが最も大きく、閲覧シェアが低いので広告で集客を寄せる余地がある
  • 単価を取る:3〜5万円のダイヤモンドリング。年明け以降の高価格帯ペルソナにもつながる
  • 誕生石:打ち出す場合は、単価の高い誕生石のアイテムを選ぶ

リングは閲覧が多いわりに売上が少なかったため、広告費が無目的にリングへ流れないよう、ダイヤモンドリングのように単価を取る目的がはっきりした商品に絞ります。

今年の作戦3:広告の着地先をギフトの入口ページに揃える

ギフトを探す人が最初に着地するページを1つ作ります。価格帯(1万円以下・2万円以下・3万円以上)、アイテム(ネックレス・ピアス・リング)、モチーフ、「男性から女性へ」といった入口を並べ、そこから各コレクションに移動できる構成です。ホリデー限定の特典もこのページにまとめます。

セルフギフト用とギフト用でページは分けません。商品が同じである以上、ページを分けても中身はほとんど変わらないからです。自分へのご褒美として買う人向けと、クリスマスに贈る人向けの違いは広告のクリエイティブ側で出し、着地先は同じ入口ページに揃えます。どの入口が多く使われたかを見れば、価格帯とアイテムのどちらで探す人が多いかも分かります。

今年の作戦4:ペルソナとクリエイティブを11月より前に決める

強化したい商品があるときだけ、カテゴリー単位のペルソナを足す

セルフギフトの訴求は1年以上続けてきたため、新しい切り口が出にくくなっています。そこで「ネックレスを探している人」のように商品カテゴリーでペルソナを置き、その下に「自分へのご褒美」「仕事で着けたい」「プレゼント」といった訴求を広告グループで分け、強化したい商品のバナーとカテゴリーのカタログを組み合わせる構成も検討しました。

ただ、すべてをアイテム単位に分けると制作物が膨大になり、ネックレスとピアスのセットのような商品も出しにくくなります。結論として、既存のセルフギフトやギフトのペルソナは止めず、強化したい商品がはっきり決まっているときに限って、カテゴリー単位のペルソナを一部追加します。

クリエイティブは日程・訴求・本数をセットで計画する

去年の「状況に応じて足していく」やり方をやめ、11月に入る前に、どの日程にどの訴求を何本出すかを決めます。本数の目安は去年と同じく、1ペルソナ×1本あたり月30万円前後です。去年、ホリデーの訴求と通常の訴求がそれぞれどれだけ成果を出したかを確認したうえで、今年の配分を決めます。

よくある質問

Q1. 年末年始のジュエリー広告は、いつから準備を始めればよいですか?

このケースでは、価格帯別のギフトページを10月中に整え、クリスマス特集のページと広告を11月の頭から出す計画にしています。ブラックフライデーの施策内容によって11月後半の予算配分が変わるので、セールを開催するかどうかは10月中に決めておくと、クリエイティブの制作が間に合います。

Q2. クリエイティブは何本用意すればよいですか?

1つのペルソナに対して1本のクリエイティブがどのくらいの広告費まで成果を保てるかを、過去の配信から確認するのが先です。このブランドでは月30万円前後が上限だったため、2か月で約300万円の広告費に対して、月6構成・18枚を用意しました。上限は商材やターゲットの広さで変わるので、フリークエンシーが上がり始める金額を自社のデータで見てください。

Q3. ブラックフライデーのセールは、年末年始の売上にマイナスになりますか?

このケースでは、ブラックフライデーで売上が上がった反動で、12月の頭に谷ができました。セール自体が悪いのではなく、その後の約2週間に買う理由を用意していなかったことが問題です。セールを行うなら、その後の期間に配送の締め切りやボーナス時期の訴求を用意しておくと、谷を浅くできます。

Q4. セルフギフトとギフトで、着地先のページは分けるべきですか?

扱う商品が同じなら、分けなくて問題ありません。違いは広告のクリエイティブで出し、着地先は価格帯・アイテム・贈る相手で選べる入口ページに揃えた方が、ページが分散せず、どの入口が使われたかの分析もしやすくなります。

まとめ

去年の年末年始は、自分のために買う人と誰かに贈る人を分け、贈る人には「1万円以下」「2万円以下」のように予算から選べる広告を出したことで成果が出ました。年末年始の前に見つけたセルフギフトの軸を止めなかったことは、年明けの運用にもつながっています。

課題は、ブラックフライデーのあと12月の頭に谷ができ、売上が直前の駆け込みに偏ったことです。今年は、ボーナス支給日と駆け込みの2つの山を日付で決め、件数を取る商品と単価を取る商品の役割を分け、すべての広告をギフトの入口ページに着地させ、クリエイティブを11月より前に計画して進めます。

年末年始の広告計画を立てる前に、まず去年の売上を日別に並べ、カテゴリーごとの売上シェアと閲覧シェアを比べてみてください。どの日に山が無く、どのカテゴリーに人が足りていないかが分かれば、予算とクリエイティブをどこに使うかはほぼ決まります。

BRANDING EC / CONSULTATION

年末年始の広告計画を、一緒に組み立てます

ブランディングECは、ECブランドの広告を専門に扱う零株式会社の広告代理店です。去年の売上の山と谷、カテゴリーごとの売上と閲覧の割合を伺ったうえで、山を作る日程、価格帯の打ち出し方、クリエイティブの本数までを一緒に考えます。相談は無料なので、まずは去年の数字を見ながら気軽に話しましょう。

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