「今月の売上をどうにかしたい」という相談で、できることは多くありません。新しい集客経路をゼロから立ち上げても、準備と学習に時間がかかり、今月の数字には届きません。数週間のうちに体験予約と入会を動かせる施策は、次の5つに絞られます。
- Web・SNS広告を出す
- 商圏にチラシを巻く
- リサイクルリード(体験で入会しなかった方・退会した方)に電話とメールをする
- 成果報酬型の広告代理店に依頼する
- 比較サイトに出稿する
そして、この5つは「どれが当たりか」を選ぶ話ではありません。経路を混ぜて、いろいろな場所からPVとリードを取りにいくほうが、月ごとの件数は安定します。1つの経路に寄せるとその月の調子にそのまま振られますが、5つに分散させておけば、どこかが落ちた月も合計はならされて平均に近づいていきます。
この5つは、かかる費用も、動き出すまでの日数も違います。今日のうちに着手できるものから、入稿と審査で数日かかるもの、紙を刷って配るまでに2週間ほど見るものまであります。以下は着手の早い順に並べ、それぞれ何を決めれば動き出せるのかを書きます。
リサイクルリードに電話とメールをする
いちばん早く動くのは、すでにスタジオと接点がある人への連絡です。体験に来たけれど入会しなかった方、以前通っていて退会した方、資料だけ請求して止まっている方。この層は立地もレッスンの内容もインストラクターの雰囲気も知っているので、説明の手間がかかりません。媒体費もゼロで、必要なのは人の時間だけです。
引き上がりやすい理由は、検討が一度は進んでいることと、人の体が数か月で変わることです。入会に至らなかった理由は、料金、通える時間帯、他店との比較、その時期の家計など、「今ではなかった」という程度の話が多くを占めます。退会した方も、仕事が忙しくなった、引っ越しを考えていた、体調を崩したという事情が大半です。そして最近また姿勢が崩れてきた、腰に違和感が出てきた、体重が戻ってしまったという変化は、本人のなかだけで起きていて、スタジオからは見えません。連絡の回数を増やすほど、相手の「そろそろ再開しようかな」という時期に当たります。
電話は近況をたずねることから
電話は「最近いかがですか」「お体の調子はどうですか」から入ります。レッスンを売り込む前に、相手の今の状態を聞く順番です。姿勢や腰の話が出てくれば、「この時期にこういうレッスンを増やしました」「久しぶりなら、まず1回だけ試してみませんか」とつなげられます。関心がなさそうなら長く話さず、「また数か月したらご連絡しますね」で切り上げます。
電話はメールより引き上がりやすい一方、受付とインストラクターの時間を取ります。1日に何件かけるかを決め、受付が落ち着く時間帯に回すほうが続きます。インストラクターの空き時間に数件ずつという形でも構いません。
メールは短く、今の内容と予約リンクだけ
メールはかしこまった文面にしなくてかまいません。近況をたずねる一文、いま力を入れているレッスンの内容、キャンペーンがあればその案内、予約ページへのリンク。これで足ります。長くなるほど読まれません。件名は「キャンペーンのお知らせ」よりも「最近、姿勢はいかがですか」のように相手の状態を指すほうが開かれます。配信を止めてほしい方のために、配信停止の連絡先は必ず書き添えます。
メールの開封を見てから電話する
メール配信では、誰が開封したか、本文中のどのリンクを押したかが記録されます。体験レッスンの案内を開いて料金ページまで見た方は、その時点で検討しています。ここに電話をかければ、反応がなかった方にかけるより話が進みます。開封も反応もなかった方は次の配信まで待ちます。
この材料を溜めるには、月1回でもメールマガジンを配信し続ける形をつくるのが先です。思いついたときだけ単発のキャンペーンメールを送る運用では、誰が反応する人なのかが分かりません。
連絡した結果を1件ずつ残す
この施策で差が出るのは、連絡した事実と相手の反応を残しているかどうかです。専用のツールがなくても、Excelやスプレッドシートで足ります。列は、お名前、連絡手段、連絡した日、相手の反応、次に連絡する日。これだけで二重に電話する事故も防げますし、「3か月後にもう一度」という約束も守れます。
反応は、再開の意思がある人、迷っている人、今は関心がない人の3段階で分けます。意思がある人はその場で予約へ案内し、迷っている人は1か月後、関心がない人は3か月後に回します。電話で聞いた断りの理由は、次のメール文面やホームページの説明の材料にもなります。顧客から直接聞いた言葉は、こちらで考えたコピーより正確です。
Web・SNS広告を出す
アカウントがすでにあるなら、バナーと文面を用意して入稿すれば数日で配信が始まります。ピラティススタジオで使う面は3つです。
Instagramのフィードとストーリーズ
通える範囲に住んでいる人へ、スタジオの存在を知らせる役割です。配信地域をスタジオ周辺に絞り、フィードとストーリーズの両方に出します。見せるのは、レッスン中の様子、スタジオの内装、インストラクターの人柄といった、通う前に知りたい情報です。バナーの配色や言葉の選び方は、ホームページや通常の投稿とそろえます。広告だけ雰囲気が違うと、プロフィールを見に来た人が同じスタジオだと感じません。
Google・Yahoo!の検索広告
「エリア名+ピラティス」「エリア名+ピラティス おすすめ」のように、その地域で通える場所を探していることが明らかなキーワードに入札します。語順の違いを拾いたいので、フレーズ一致を軸に組みます。すでに探している人に出すので、商圏が重なっていれば反応はいちばん素直に出ます。
GoogleマップとPMAXのローカル広告
スマートフォンでGoogleマップを開き、現在地の周辺でスタジオを探す人は一定数います。ここに出すには、Googleビジネスプロフィールと広告アカウントを連携し、来店を目的としたキャンペーンで配信します。マップ上の情報、写真、口コミへの返信が整っているほど、広告から見に来た人が候補として残してくれます。
飛ばし先は、いまあるサイトで始めてよい
広告を出すときに、専用のランディングページを先に作る必要はありません。制作には時間とお金がかかり、その間に配信は始まりません。急いでいる時期なら、いま使っているホームページのトップか、その店舗の紹介ページへ流し、計測タグだけ入れて始めます。
そのうえで、着地したページの中身は確かめます。予約サイトで店舗を選ばせる構成なら、広告から来た人が迷わず自分の店舗にたどり着けるか。店舗紹介ページが住所とオープンの告知だけなら、レッスンの内容、料金、体験の申し込み方法を足しておきます。ページを作り直すのは後で構いませんが、この3点が書かれていないと、同じ広告費でも予約の数が変わります。
少額でも止めない
広告は、売上が足りない月だけ出して落ち着いたら止めるものではありません。止めた瞬間にその経路からの問い合わせはゼロになり、再開しても媒体側の学習が一度リセットされているため、以前と同じ反応が戻るまで時間がかかります。予算が厳しい時期は、1日100円から200円程度で配信を残す形を検討します。この金額では件数は期待できませんが、配信の構造と計測を生きた状態で保てます。売上に余裕が出た月に予算を上げれば、学習済みのアカウントからすぐ配信量を増やせます。繁忙期と閑散期がはっきりしている業態では、この上げ下げで調整するほうが、止めて再開するより効率がよくなります。
3つの面は役割が違います。検索広告は今探している人、Instagramはまだ探していない人への認知、マップは現地で探している人。どれか1つに寄せると、その経路が不調な月に売上がまとめて落ちます。少額ずつでも並べて出しておくのは、このブレを抑えるためです。
計測が未整備でも配信は始められる
「タグが入っていないから広告を出しても意味がない」と考えて止めてしまうことがあります。そもそも、デジタルの計測で全部を追うことはできません。Instagramで広告を見て、その場では予約せず、帰宅後にパソコンでスタジオ名を検索して予約した人は、Instagram側のコンバージョンには記録されません。それでも広告が予約のきっかけになっていることは事実です。
計測の役目は、媒体の機械学習に「どの配信が予約につながったか」を教えることと、こちらが数字を見て判断しやすくすることです。どちらも要りますが、急いで認知を取りたい時期なら、計測が未整備でもスタジオ周辺の数キロに配信してみる判断は成り立ちます。設置は並行で進めます。サイトがWordPressなら、プラグイン経由でタグを入れ、サイトへのアクセスと予約完了ページへの到達を記録できる状態にします。制作会社がサーバーを管理していてログイン情報を出せない場合も、WordPressの管理画面に入れれば作業できることが多いです。
商圏にチラシを巻く
ピラティススタジオは、通える距離に住んでいるか働いているかで候補から外れます。商圏が決まっている業態では、紙を直接届ける施策が今も効きます。原稿を作って刷り、配布業者に渡すまでで2週間ほど見ておきます。
決めることは3つです。どの範囲に配るか、何を書くか、どれくらいの間隔で配るか。範囲は、スタジオから徒歩や自転車で通える距離を基準にします。書く内容は、場所、料金、体験の申し込み方法の3点が分かれば足ります。間隔は、少なくとも3か月に1回は同じ範囲に配る形にします。1回配って反応がなかったから止める、では商圏に名前が残りません。
配布のたびに、配った範囲と部数、その後の体験予約の件数を記録します。2回、3回と続けるうちに、反応が出る地域と出ない地域の差が見えてきます。そこまで来れば、配る範囲を絞って部数を下げても同じだけの反応が取れるようになります。
比較サイトに出稿する
地域のピラティススタジオを紹介している比較サイトがあります。申し込みから掲載までが早く、掲載料か紹介1件あたりの費用で成り立つ形が多いので、自社の広告とは別の入口として足せます。
出すときに見ておくのは、そのサイトが自分の商圏の検索でどのくらい上に出ているか、同じエリアに何店舗が載っているかです。掲載店舗が多いページでは、写真と料金表記と体験の案内が並んで比較されます。載せる情報が住所と電話番号だけだと、同じ費用を払っても選ばれません。スタジオの写真、レッスンの種類、体験の料金、通っている方の層あたりまで埋めてから出します。
経路として続けるかどうかは、紹介1件あたりの費用と、そこから入会した人数で判断します。1か月で判断がつかなければ、2、3か月は同じ条件で見てから決めます。
成果報酬型の広告代理店に依頼する
体験予約1件あたりで費用が決まる形の代理店があります。こちらで媒体を触らずに件数を入れられるので、人手が足りない時期の入口として使えます。
一度に大量のリードを入れると質が安定しないことはよく起きます。そのため、月に1件か2件分の予算に抑えて依頼し続けるという使い方のほうが、経路を細く保てます。「とりあえず行ってみたい」程度の温度のリードでも、スタジオの前を通ったことすらない人より検討は進んでいます。来た方の名前と反応はリサイクルリードのリストに入れておき、入会しなければ数か月後に連絡します。
依頼する前に、1件あたりの単価、どの媒体に出すのか、リードの受け取り方(電話番号が入るのか、メールアドレスだけか)を確認します。単価がリードの質に見合わないと感じたら、単価の交渉をするか、配分を見直します。
費用とスケジュールの目安
5つの施策は、動き出すまでの日数とかかるお金が違います。今月どれから着手するかを決めるために、目安を並べます。
| 施策 | 着手から配信・配布まで | 費用の目安 | 最初の反応 |
|---|---|---|---|
| リサイクルリードへの電話・メール | 当日 | 媒体費なし(人の時間のみ) | その日から予約が入る |
| Web・SNS広告 | アカウントがあれば2〜3日、新規開設と計測の設置を含めると半月〜1か月 | 1店舗あたり月2万円程度から。維持だけなら1日100〜200円 | 配信初日から。平均的な体験予約単価が見えるのは3か月後 |
| 商圏へのチラシ | 原稿・印刷・配布手配で2週間前後 | 部数と配布エリアで変動 | 配布の週とその翌週に集中 |
| 比較サイトへの出稿 | 申し込みから数日〜2週間 | 掲載料、または紹介1件あたりの費用 | 掲載された週から |
| 成果報酬型の代理店 | 条件の確認と契約で1〜2週間 | 体験予約1件あたりの単価 | 配信が始まった週から |
広告費は、1店舗あたり月2万円程度から始められます。4店舗あれば月8万円です。代理店に運用を任せる場合の手数料は広告費の20%が一般的で、月8万円なら1万6千円ほどが上に乗ります。この金額は固定で考える必要はありません。繁忙期は上げ、閑散期は下げる。売上が厳しい月は1日100円から200円に落として配信そのものは残す。アカウントと計測が生きていれば、予算を上げた月にすぐ配信量を戻せます。
スケジュールは、広告だけ少し長く見ます。計測の設置、アカウントの設計、狙う層の整理、バナーと広告文の用意で半月から1か月。配信を始めてから、月ごとのブレをならした平均的な体験予約単価が見えるまでにさらに3か月ほど。この3か月を待つあいだの売上は、リサイクルリードとチラシで埋めます。
そして、月末か月初に数字を見る日を決めておきます。かけた広告費と予約件数、電話した件数と再開した人数、配ったチラシの部数、比較サイトと代理店からの紹介件数。毎月同じ項目を同じ場所に書き足していくだけで、翌月どこへ寄せるかを決められます。
経路を分散させると件数が安定する
5つを並べる理由は、どこから来た人が多いかを当てにいくためではありません。月あたりの体験予約の件数を、読める幅に収めるためです。
経路が1つだけだと、その月の数字はその経路の調子で決まります。検索広告だけで回していれば、競合が入札を上げた月、キーワードの検索数が落ちた季節、審査で広告が止まった週に、そのまま予約件数が落ちます。チラシ1本なら、配った地域の当たり外れがそのまま月の売上になります。ブレの原因が1つしかないので、振れ幅がそのまま表に出ます。
経路を5つに分けると、同じことが起きても全体には半分以下しか響きません。検索広告が不調な月にリサイクルリードから3件入る、比較サイトが静かな月にチラシから2件入る。件数の少ない経路でも、数が増えるほど合計は月ごとの平均に近づき、来月いくら入るかを前提にして人員とレッスン枠を組めるようになります。経路ごとの1件あたりの費用が分かってくれば、落ちた経路から伸びた経路へ予算を移すという判断もできます。
分散させるときに1つだけ注意があるのは、記録の持ち方です。経路が増えるほど、どこから来た人なのかが混ざります。問い合わせや体験予約を受けるときに「どこで知りましたか」を1行聞いて残しておくと、どの経路を太くするかを数字で決められます。計測タグで拾えない紙や口コミの分も、ここで補えます。
店舗が複数あるときの分け方
複数店舗を運営していて、ホームページもInstagramもアカウントが1つという構成はよくあります。この場合、どの店舗の集客をしているかを決めているのは広告側です。配信する地域とバナーの内容で店舗を指定し、着地させるページはホームページのトップか、その店舗の紹介ページにします。
店舗を増やすときに広告アカウントを分ける必要はありません。媒体の機械学習はキャンペーン単位で動くので、キャンペーンを分ければ配信先も最適化も別々に進みます。Google広告、Yahoo!広告、Meta広告のいずれも、キャンペーン、広告グループ、クリエイティブという階層はほぼ同じ構造です。
分け方は、店舗と狙う層の組み合わせで考えます。「A店・30代女性」「B店・40代女性」のように決めてキャンペーンを立てます。同じ会社でも、駅前の店舗と住宅街の店舗では来る人の年齢も通う時間帯も違います。ここを1つのキャンペーンに混ぜると、配信がどちらかに引っ張られます。
今月の動かし方と、来月以降に残すもの
5つを一度に始める必要はありません。今日できるのは、リサイクルリードへのメール一括配信と電話です。費用がかからず、反応も早く出ます。同じ週に、Instagramのフィードとストーリーズへ少額で配信を出し、チラシの原稿づくりと配布業者の手配を始めます。比較サイトと成果報酬型の代理店は、問い合わせて条件を確認したうえで、細い金額で1つずつ足します。ここまでは、計測環境が整うのを待たずに進められます。
並行して、計測の設置、アカウントの設計、狙う層の整理、検索広告とマップ広告の立ち上げを進めます。ここは目先の売上には間に合いませんが、組み終われば、予算を下げても配信そのものは残る形になります。目先の施策で今月をつなぎながら、この土台を同時に組む順番です。
来月以降に回すのは、来た人が予約するかどうかを動かす側の仕事です。店舗紹介ページの中身、ランディングページ、Googleビジネスプロフィールの写真と口コミへの返信、ブログとInstagramの定期発信、LINEでの配信。どれも、同じ広告費のまま予約の数を増やす方向に効きます。1つずつ、手を離しても止まらない形にしてから次へ移ります。1店舗で組んだ構造は、他店舗へそのまま広げられます。
まとめ
目先の売上を立てる施策は、リサイクルリードへの電話とメール、Web・SNS広告、商圏へのチラシ、比較サイトへの出稿、成果報酬型の代理店の5つです。早く動くのはリサイクルリードで、費用もかかりません。広告は数日で配信でき、チラシは2週間ほど、比較サイトと代理店は条件の確認から入ります。
そして、どれも1本足で回さないことが前提になります。広告を完全に止めればその経路からの問い合わせは消えますし、既存リストへの連絡をやめればスタジオを思い出す機会がなくなります。いろいろな場所から少しずつPVとリードを取り、経路を分散させておくほど、月ごとの件数は平均に収束していきます。細くても複数の経路を生かし続け、計測とアカウントの土台を並行して整える。その状態をつくったうえでレッスンそのものの質を磨いていくほうが、集客に使う労力は年々小さくなっていきます。