都内で6店舗を運営するピラティススタジオから、Googleビジネスプロフィール(Googleマップに出る店舗情報)とGoogle広告をつなぎたい、という相談を受けました。先方から届いたのは、店舗ごとの管理用メールアドレスの一覧です。五反田と新富町は個人のGmail、目黒・恵比寿・船橋は会社ドメインのアドレス、奥沢は「調べています」。この一覧を見て、担当の方から3つの質問が出ました。

  • Googleアカウントは1つにまとめた方がよいのか、1つで問題は起きないのか
  • 広告運用会社のGoogleアカウントを、店舗ごとに招待してもらう形が正しいのか
  • 1つのGoogleアカウントで作ったGoogle広告に、今の分かれた状態のまま全店舗を紐づけられるのか

同じ形の相談は、整体院、学習塾、美容室、歯科など店舗を増やしてきた事業者から繰り返し受けます。店舗を出すたびに担当者が変わり、プロフィールを作ったアカウントがばらばらになるからです。この記事は、そのときに返した答えをそのまま整理したものです。

先に結論:運用側のアカウントを各店舗の管理者に招待してもらう

3つの質問への答えは次のとおりです。

  • Googleアカウントは1つに集約して構いません。ただし「オーナーが1人だけ」の状態は作らず、復旧用のオーナーをもう1人置きます。
  • 広告運用側のGoogleアカウントを、6店舗それぞれの「管理者」として招待してもらう形が最短です。オーナー権限は不要です。
  • 1つのGoogle広告アカウントで、管理アカウントが分かれたままの全店舗を紐づけられます。先方のアカウントを統合し終えるのを待つ必要はありません。

順番としては、まず招待で連携を済ませ、アカウントの集約とオーナーの整理は並行して進めます。連携を集約の後回しにすると、先方の社内調整が終わるまで広告側の住所アセット(広告の下に店舗名・住所・営業時間が出る表示)が使えず、出稿の開始が1か月単位で遅れます。

相談の状況:6店舗の管理アカウントが2つに分かれ、1店舗は所有者不明

届いた一覧を整理すると、状況はこうでした。

店舗プロフィールを管理しているアカウント種類
五反田・新富町個人で取得したGmailアドレス無料のGoogleアカウント
目黒・恵比寿・船橋会社ドメインのメールアドレス会社アカウント(Workspaceかどうかは未確認)
奥沢調査中不明

2つのアカウントに分かれた経緯は、最初の2店舗を開業時に代表者個人のGmailで登録し、3店舗目以降は入社した担当者が会社のアドレスで登録した、というものです。奥沢は出店時に制作会社がプロフィールを作った可能性があり、社内の誰も所有者を把握していませんでした。

この状態そのものは珍しくありません。問題は、このまま広告連携を進めると、承認作業が2回に分かれ、しかも1店舗だけ連携できない形で運用が始まることです。

分かれたままだと、連携と運用で何が起きるか

Google広告とビジネスプロフィールの連携は、店舗単位ではなく「プロフィールにアクセスできるGoogleアカウント」単位で成立します。管理アカウントが2つあれば、連携の承認も2回必要になり、後から店舗情報を直すときも「どちらのアカウントが持っている店舗か」を毎回確かめることになります。

個人のGmailが単独で店舗を所有している状態は、連携以前に事業上のリスクです。その人の退職、パスワードの失念、2段階認証に使っていたスマートフォンの機種変更のどれか1つで、五反田と新富町のプロフィールに誰も入れなくなります。入れなくなったプロフィールは、口コミへの返信も営業時間の変更もできず、広告の住所アセットも更新できません。

奥沢が不明のままだと、広告の住所アセットは5店舗分しか出ません。奥沢の近くで検索した人には店舗の住所も経路案内も表示されず、1店舗だけ広告の効き方が落ちます。6店舗のキャンペーンを1つにまとめて運用する場合、この差は数字を見ても気づきにくいところです。

連携のやり方は3つ。違いは先方の作業量と、こちらで触れる範囲

Google広告側にビジネスプロフィールを紐づける方法は、実務上3つあります。どれでも連携はできますが、先方に頼む作業と、連携後に広告運用側でできることが違います。

方法先方にお願いする作業連携後に運用側でできること向いている状況
① 各店舗に運用側アカウントを管理者として招待2つのアカウントから、合計6回の招待操作広告連携、住所アセットの編集、来店コンバージョンの設定、口コミ・営業時間・写真の確認と修正今すぐ連携を始めたい。店舗情報の不備も運用側で直したい
② ビジネスグループを作り、グループに運用側アカウントを管理者追加グループ作成、6店舗の移動、招待1回①と同じ先方の社内で、先にアカウント整理を終える余裕がある
③ Google広告側からリンク申請を送り、先方のオーナーが承認2つのアカウントで承認操作広告連携と住所アセットの表示のみ。プロフィールの中身は触れない先方が運用会社にプロフィールの閲覧権限を渡したくない

私たちが①を勧めた理由は、先方の作業が「招待画面でメールアドレスを入れて管理者を選ぶ」だけで、その日のうちに動き出せるからです。②は構成としてはきれいですが、ビジネスグループの作成と店舗の移動を先方にお願いする時点で、担当者の確認待ちが入ります。③は連携だけなら成立しますが、営業時間の表記ゆれや住所の番地違いに運用側が気づいても自分では直せず、不具合のたびに先方へ修正依頼を出す形になります。

①で連携を済ませたあと、②の形に移行しても連携は壊れません。先方の整理が終わった時点でグループへ移してもらえば、権限の確認だけで済みます。

1つのGoogle広告アカウントで全店舗を紐づけられるか

紐づけられます。Google広告には「1つの広告アカウントに紐づけられるビジネスプロフィールのアカウントは1つまで」という制限がありません。広告運用側のGoogleアカウントが各店舗の管理者になっていれば、広告の管理画面で連携先を選ぶ画面に、自分がアクセスできる店舗がまとめて表示されます。どの店舗がどの先方アカウントに所有されているかは、ここでは関係ありません。

今回のケースで言えば、個人Gmail側から五反田と新富町、会社ドメイン側から目黒・恵比寿・船橋の招待が届いた時点で、運用側は1回の操作で5店舗を広告アカウントに紐づけられます。奥沢は所有者が判明して招待されたあと、同じ連携に後から加わります。連携をやり直す必要はありません。

広告アカウントがMCC(複数の広告アカウントをまとめて管理するアカウント)の配下にある場合は、MCC側で連携しておくと、配下の広告アカウント全部で同じ住所アセットを使えます。ブランドごとやエリアごとに広告アカウントを分けている事業者は、MCC側での連携にしておく方が後の手間が少なくなります。

Googleアカウントは1つで足りるか。オーナーは2人置く

ビジネスプロフィールは、1つのGoogleアカウントで何店舗でも所有・管理できます。6店舗程度なら店舗数の上限や一括確認の要件は関係なく、広告連携もプロフィールに権限を持つアカウントが1つあれば成立します。口コミへの返信、投稿、閲覧数の確認、広告連携の承認が1か所で済むので、集約自体は正しい方向です。

それでも「オーナーが1人だけ」にはしません。理由は復旧です。会社ドメインのアドレスであっても、担当者の退職やパスワードの失念、2段階認証の端末紛失が起きれば、6店舗まとめて触れなくなります。Google自身も、復旧のために複数のオーナーを置くことを案内しています。

メインのオーナーは1店舗につき1人だけですが、「オーナー」は複数置けます。メインとは別にオーナーを1人追加しておけば、メインのアカウントが使えなくなっても権限を引き継げます。追加するのは代表者か、会社で共有するアドレス(例:gbp@会社ドメイン)が無難です。個人のGmailを復旧用オーナーに残すと、同じリスクが形を変えて残ります。

会社ドメインのアドレスが「Workspace」かどうかで安全度が変わる

会社ドメインのメールアドレスには2種類あります。Google Workspaceで発行したアカウントと、会社ドメインのメールアドレスを使って作った無料のGoogleアカウントです。見た目は同じ「k.tanaka@会社ドメイン」でも、前者は会社の管理者がパスワードのリセットや権限の移譲をでき、後者は本人以外に復旧手段がありません。後者は実質的に個人Gmailと同じ扱いになります。

今回の相談でも、会社ドメインのアドレスがWorkspaceかどうかは先方に確認を取りました。Workspaceでなければ、復旧用オーナーの追加は「推奨」ではなく「必須」です。

権限の最終形:メインのオーナー・オーナー・管理者の分担

集約と連携が終わったあとの権限は、次の形に落ち着かせます。

権限誰に付けるか役割
メインのオーナー会社ドメインの担当者アカウント(6店舗すべて)日常の管理。店舗の追加・削除、オーナーの変更
オーナー代表者または会社共有のアドレス復旧用。メインが使えなくなったときに権限を引き継ぐ
管理者広告運用会社のGoogleアカウント広告連携、住所アセット、来店コンバージョン、店舗情報の修正

個人Gmailで所有している五反田と新富町は、そのGmailから会社ドメインの担当者を「オーナー」として招待し、承認後にメインのオーナーを移譲します。移譲が終わったら、個人Gmailの権限は外して構いません。外す前に、そのGmailが他の店舗や広告アカウントに紐づいていないかだけ確認します。

広告運用側に渡すのは「管理者」で足ります。管理者はプロフィールの編集と広告連携ができますが、店舗の削除やオーナーの変更はできません。先方にとって渡しやすく、運用側にとって必要な範囲は全部入っている権限です。

所有者が分からない店舗の調べ方

奥沢のように所有者が分からない店舗は、Googleマップから調べます。手順は次のとおりです。

  1. Googleマップで店舗名を検索し、該当のリスティングを開く。
  2. 「このビジネスのオーナーですか?」をクリックする。
  3. すでに誰かが所有している場合、現在のオーナーのメールアドレスが一部伏せ字で表示される。先頭の数文字とドメインで、社内の誰か、退職者か、制作会社かの見当がつく。
  4. 心当たりがなければ、その画面から「オーナー権限をリクエスト」を送る。
  5. 現在のオーナーに通知が届き、3日以内に返答がなければ、自分で確認手続きに進める案内が届く。

出店時に制作会社や前任者がプロフィールを作っていたケースでは、この手順でほぼ特定できます。あわせて、同じ住所に重複したリスティングが残っていないかも確認します。重複があると、口コミと閲覧数が2つに割れ、広告の住所アセットでどちらを使うかも曖昧になります。重複は「重複を報告」から統合を申請します。

先方に送る依頼文の例

実際に先方へ送った依頼文を、宛先を伏せて載せます。招待してほしいアカウントと、やってほしいことを番号で切るのがコツです。1通に「集約」と「招待」を両方入れると、先方は読みながら作業の順番を組み立てられます。

お世話になっております。ご連絡ありがとうございます。

広告連携を安定して運用するため、下記の形でお願いできますでしょうか。

1. 五反田・新富町(個人Gmailで管理中)について、会社ドメインの担当者アカウントを「オーナー」として招待いただき、承認後にメインのオーナーをそちらへ移していただく。

2. 6店舗それぞれに、弊社の広告運用用アカウント(<運用側のメールアドレス>)を「管理者」として追加していただく。オーナー権限は不要です。

3. 奥沢店については、Googleマップで店舗を開き「このビジネスのオーナーですか?」から現在のオーナーのメールアドレス(一部伏せ字)をご確認ください。心当たりがない場合は、その画面からオーナー権限のリクエストをお送りください。

お急ぎであれば、先に2の管理者追加だけいただければ、その日のうちに連携を進められます。1と3は追って進めていただければ問題ありません。

依頼文で「オーナー権限は不要です」と明記しておくと、先方の社内で「外部に所有権を渡すのか」という確認が発生しません。この一文があるかどうかで、返答までの日数が変わります。

住所アセットの絞り込み

運用側のアカウントが他の事業者の店舗にも管理者として入っている場合、連携先の一覧には他社の店舗も並びます。住所アセットはビジネス名またはラベルで絞り込み、対象の6店舗だけが出る状態にします。絞り込みを忘れると、別の事業者の店舗住所がこの広告に出る事故につながります。

来店コンバージョンの計測

プロフィールと連携すると、広告をクリックした人が店舗を訪れた推定数を「来店」として計測できる場合があります。表示されるかどうかはGoogle側の条件によりますが、店舗型の広告では体験予約と並ぶ評価軸になるので、連携後に計測の設定画面で表示されているかを確認しておきます。

先方がビジネスグループに移したあとの権限

連携後に先方がビジネスグループを作って店舗を移動した場合、運用側の管理者権限がそのまま残っているかを一度だけ確認します。残っていなければ、グループに対して管理者として招待し直してもらいます。連携そのものをやり直す必要はありません。

よくある質問

管理者の権限だけで、広告連携まで本当にできますか

できます。Google広告との連携に必要なのは、プロフィールに対する管理者以上の権限です。オーナー権限は店舗の削除やオーナーの変更に必要なもので、広告運用には使いません。

個人Gmailで管理している店舗は、連携の前に会社アカウントへ移さないといけませんか

先に連携して構いません。個人Gmailから運用側アカウントを管理者として招待してもらえば、その店舗もすぐ紐づきます。会社アカウントへの移譲は並行して進め、移譲後に権限が残っているかだけ確認します。

店舗ごとに広告アカウントを分けた方がよいですか

6店舗程度で予算が店舗ごとに独立していないなら、1つの広告アカウントで店舗ごとにキャンペーンを分ける方が運用しやすい構成です。店舗ごとに広告アカウントを分けると、連携も住所アセットの絞り込みも店舗数分必要になります。分けるのは、店舗ごとに請求先や決裁者が違う場合に限ります。

連携先の一覧に、対象外の店舗や閉店した店舗が出てきます

運用側アカウントが過去に管理者として入った店舗が残っている状態です。住所アセットの絞り込みで対象の店舗だけを指定すれば広告には出ません。閉店した店舗は、プロフィール側で「閉業」に設定しておくと一覧でも区別できます。

まとめ

管理アカウントが分かれている複数店舗のビジネスプロフィールをGoogle広告と連携するときは、先方のアカウント整理を待たず、広告運用側のアカウントを各店舗の管理者として招待してもらうところから始めます。1つの広告アカウントで、分かれたままの全店舗を紐づけられます。

並行して、所有は会社ドメインのアカウントに集約し、復旧用のオーナーをもう1人置きます。所有者が分からない店舗はGoogleマップの「このビジネスのオーナーですか?」から調べ、必要ならオーナー権限をリクエストします。連携が終わったら、住所アセットの絞り込みと来店コンバージョンの表示、先方がグループに移したあとの権限の3点を確認して運用に入ります。