ブランドは「便利だから買う」だけではない。アーカーの3つの便益を初心者向けに解説機能だけでは説明できない「好き」「安心」「このブランドを選びたい」を整理する
ブランドを考えるとき、ロゴや見た目、高級感だけに意識が向きがちです。しかし実際には、顧客がブランドから受け取っている価値はそれだけではありません。この記事では、デービッド・アーカーの便益の考え方をもとに、情緒的便益、自己表現便益、社会的便益を初心者向けに整理します。広告やコンテンツの訴求を考える時にも、そのまま使える形まで落とし込みます。
01そもそも便益とは何か
マーケティングでいう便益とは、その商品やサービスを買うことで顧客が得られる価値です。車なら移動できること、ホテルなら泊まれること、パソコンなら仕事ができること。こうした性能や機能から直接得られる価値は、一般に機能的便益として整理できます。
ただ、現実の購買行動はそれだけでは説明できません。時計は時間が分かれば十分なはずなのに高級時計が選ばれ、コーヒーはどこでも飲めるのにお気に入りのカフェに通う人がいます。人は便利さだけでなく、感情、自己イメージ、人とのつながりまで含めてブランドを選んでいます。
02情緒的便益とは「どう感じるか」
情緒的便益とは、その商品やブランドを買ったり使ったりすることで得られる感情的な価値です。ホテルなら、部屋に入った瞬間の高揚感、日常から離れた安心感、自分へのご褒美を感じる気持ちがこれに当たります。
車なら、ただ移動できることではなく、運転していて楽しい、家族を安心して乗せられる、駐車場に停まっている姿を見るだけで満足する、といった感情が価値になります。ブランドは商品そのものだけでなく、その商品を使った時に生まれる気持ちまで提供しているということです。
機能は競合に真似されやすくても、「このブランドなら安心する」「この店だと落ち着く」といった感情は簡単にはコピーされません。商品、接客、デザイン、広告、購入後の体験が積み重なって初めて生まれるからです。
03自己表現便益とは「どんな自分でいられるか」
自己表現便益とは、そのブランドを使うことで自分がどんな人間なのかを表現できる価値です。服は身体を守るためのものですが、私たちは寒くなければ何でも良いとは考えません。シンプルな服を選ぶ人もいれば、目立つ服や高級ブランドを選ぶ人もいます。
その背景には、大人っぽく見られたい、センスの良い人でいたい、流行より自分らしさを大切にしたい、といった自己イメージがあります。つまり商品選びそのものが「私はこういう人間です」という表現になることがあります。
スターバックスで仕事をする自分、Apple製品を使うクリエイティブな自分、長く使える良いものを選ぶ自分。こうした自己認識にブランドが関わる時、そのブランドは単なる道具以上の役割を持ち始めます。
04社会的便益とは「誰とつながれるか」
社会的便益とは、ブランドを通じて他の人や集団とのつながりを得られる価値です。代表例はスポーツチームです。ユニフォーム自体は衣服ですが、同じチームを応援する仲間と一体感を持てることに大きな価値があります。
同じことは、バイク、自動車、アウトドア、ゲーム、音楽、ファッションなど、さまざまなジャンルでも起きています。同じブランドを持っていることが会話のきっかけになり、SNSで交流が生まれ、イベント参加やコミュニティ形成につながることがあります。
現代はSNSによって、この便益がさらに見えやすくなりました。商品を買って投稿し、反応をもらい、同じ価値観の人とつながる。その結果、「商品が好き」から「このブランドを中心にある世界が好き」へと愛着が深まることがあります。
054つの便益を一つの商品で整理する
ここまでを一つの商品で整理すると、理解しやすくなります。たとえばアウトドアブランドのジャケットを考えてみます。暖かい、軽い、雨を防げる、丈夫といった性能は機能的便益です。
一方で、これを着て出かけるとワクワクする、良い道具を持っていると安心するといった感情は情緒的便益です。アウトドアを楽しむ人でありたい、自然を大切にする自分でいたい、道具にこだわる人でありたいという感覚は自己表現便益です。そして同じブランドが好きな人と会話が生まれる、仲間とつながれるという価値が社会的便益です。
| 便益の種類 | 見方 | ジャケットの例 |
|---|---|---|
| 機能的便益 | 何ができるか | 防水、保温、軽量、耐久性 |
| 情緒的便益 | どう感じるか | 着るとワクワクする、安心する |
| 自己表現便益 | どんな自分でいられるか | 自然を楽しむ自分、道具にこだわる自分 |
| 社会的便益 | 誰とつながれるか | 仲間との会話、コミュニティ参加 |
一着のジャケットでも、顧客が受け取っている価値は一つではありません。この重なりが強いほど、価格やスペックだけで比較されにくいブランドになっていきます。
06なぜ強いブランドは機能だけで終わらないのか
ここで重要なのは、機能的便益が不要だという話ではないことです。品質、価格、配送、基本性能はどの商材でも大前提です。ジュエリーなら品質、ホテルなら快適さ、ECなら正しく届くことがまず必要です。
問題は、機能的便益だけでブランドを作ろうとすることです。機能だけで戦うと、より安い競合、より高性能な競合が現れた瞬間に比較されます。一方で、「このブランドを使うと少し気分が上がる」「このブランドを選ぶ自分が好き」「このブランドを通じて人とつながれる」といった価値は、スペック表だけでは代替しにくいです。
- 商品の性能を超えて、使った時の感情まで設計できているか
- ブランドを選ぶことが顧客の自己イメージにつながっているか
- コミュニティや会話のきっかけまで含めて接点を作れているか
- 広告と購入後体験で同じ価値が一貫しているか
07広告づくりに使うなら4つの質問に置き換える
便益の話は難しく見えますが、実務では4つの質問に置き換えるとかなり使いやすくなります。新しい広告やLP、メルマガ、商品ページを作る前に、この4つを書き出すだけでも訴求の深さが変わります。
- この商品は顧客に何をしてくれるのか。
- この商品を買ったり使ったりすると、顧客はどんな気持ちになるのか。
- この商品を選ぶことで、顧客はどんな自分でいられるのか。
- この商品やブランドを通じて、顧客は誰とつながれるのか。
たとえばジュエリーなら、素材やカラット数だけでなく、身につけるたびに気分が上がる、自分らしいものを長く選ぶ人でいられる、大切な人との記念が深まる、といった訴求が見えてきます。同じ商品でも、どの便益を前面に出すかで広告の表情は大きく変わります。
08企業側の思い込みで便益を決めない
最後に重要なのは、便益を企業側だけで決めつけないことです。企業は「性能が高いから売れている」と考えていても、顧客は「前からこの会社を使っていて安心だから」と感じているかもしれません。デザイン評価だと思っていたものが、「このブランドを持っている自分が好きだから」という理由で選ばれていることもあります。
だからこそ、実際の顧客に、なぜ選んだのか、使って何が良かったのか、他ではなくこれだった理由は何か、どんな気持ちになるのかを聞くことが重要です。情緒的便益、自己表現便益、社会的便益は、企業の会議室だけでは見つからないことがあります。
参考文献として、デービッド・アーカー『ブランド論』は今読んでも示唆が多い一冊です。初心者の方は、まずは自社商品やクライアントの商品について、4つの便益を一度書き出してみるところから始めると整理しやすいはずです。
99よくある質問
Q1. アーカーの3つの便益は、機能的便益と何が違いますか?
A. 機能的便益は何ができるかで、3つの便益は感情、自己イメージ、人とのつながりといった機能を超えた価値を扱います。
Q2. 情緒的便益と自己表現便益はどう見分ければよいですか?
A. 情緒的便益は使った時にどう感じるか、自己表現便益はそのブランドを通じてどんな自分を表せるかで整理すると見分けやすいです。
Q3. 広告づくりでは3つの便益をどう使えばよいですか?
A. スペックだけで訴求せず、顧客がどう感じるか、どんな自分でいられるか、誰とつながれるかまで書き出すと訴求の幅が広がります。
Q4. 企業側の思い込みで便益を決めてしまっても問題ありませんか?
A. 問題があります。実際の顧客が感じている価値とズレることがあるため、購入理由や使用後の感情を顧客の言葉で確認することが重要です。
ブランド訴求を、スペック説明で終わらせない
広告、LP、メルマガ、商品ページで何を伝えるべきか迷う時は、便益の整理が有効です。零株式会社では、集客施策だけでなく、ブランド文脈を踏まえた訴求設計まで支援しています。
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