ECの広告には、媒体や時代が変わっても揺らがない鉄則がひとつあります。安い商品はなるべく広告に出さず、売値の高い商品を広告に出す。これだけでROAS(広告費に対する売上の割合)は大きく変わります。
広告の文章や画像を磨く前に、そもそも「どの商品を広告に載せるか」で効率の上限はほぼ決まっています。この記事では、なぜそうなるのかという仕組みと、広告に載せる商品の選び方を、ECを運営する方に向けて解説します。
ROASの式をほどくと、先に決まるのは「何を売るか」
ROASは「広告経由の売上 ÷ 広告費」で計算します。たとえば広告費10万円で売上30万円なら、ROASは300%です。
この式の分子である売上は、さらに「売れた件数 × 商品の売値」に分解できます。つまり広告費を一定とすると、ROASを動かせる変数は2つしかありません。何件売れるかと、いくらの商品が売れるかです。
件数を伸ばすには、広告の見直しやページの改善を何か月も積み重ねる必要があります。改善できても、購入率が2倍になることはめったにありません。一方で売値は、広告に載せる商品を選んだ瞬間に決まります。3,000円の商品の代わりに30,000円の商品を選べば、その時点で分子は10倍のポテンシャルを持ちます。
努力で少しずつ動かせる変数と、選択ひとつで桁が変わる変数。ROASの話は、まず後者から考えるのが順番です。
クリックの値段は、商品の値段に比例しない
この鉄則が成り立つ理由は、広告費の仕組みにあります。検索広告もSNS広告も、費用の大半は「1クリックいくら」で発生します。そしてクリック単価を決めるのは、出稿する枠の競争状況であって、あなたが売る商品の値段ではありません。
1,500円の商品のページに連れてくるクリックも、30,000円の商品のページに連れてくるクリックも、同じ市場で広告を出していれば値段はほとんど同じです。入口のコストが同じなら、出口の売上が大きい商品ほど効率が良い。構造はこれだけです。
数字で比べる:同じ広告費で売値だけ変えると
クリック単価100円、購入率1%(100クリックで1件購入)という同じ条件で、売値だけを変えて比べてみます。1件の購入にかかる広告費は、どちらも100円 × 100クリック = 10,000円です。
| 商品の売値 | 1件あたりの広告費 | ROAS | 広告費1万円あたりの損益 |
|---|---|---|---|
| 3,000円 | 10,000円 | 30% | 7,000円の持ち出し |
| 10,000円 | 10,000円 | 100% | 売上と広告費が同額 |
| 30,000円 | 10,000円 | 300% | 売上が広告費の3倍 |
同じ広告、同じ媒体、同じ担当者でも、載せる商品の売値だけでROASは30%から300%まで開きます。広告の文章をどれだけ磨いても、この10倍の差を技術で埋めることはできません。
逆に言うと、ROASが低いとき、原因は広告の出来ではなく「安い商品を広告に出していること」であるケースが非常に多いのです。
安い商品を広告に出したくなる理由と、その落とし穴
それでも多くのECでは、安い商品が広告に載ります。理由ははっきりしていて、安い商品ほどよく売れているからです。買いやすい値段だから件数が出る。件数が出ているから「この商品を広告で伸ばそう」と考える。店頭の感覚としては自然な判断です。
ところが広告では、この判断が逆に働きます。たしかに安い商品は購入率が高めに出ます。先ほどの例で、3,000円の商品の購入率が2倍の2%だったとしましょう。1件あたりの広告費は5,000円に下がりますが、売値が3,000円なのでROASは60%。1件売るたびに2,000円の持ち出しです。購入率が2倍でも、売値が10分の1なら勝負になりません。
さらにやっかいなのは、管理画面の見え方です。安い商品は件数が積み上がるため、画面上は「売れている広告」に見えます。しかし売上額を広告費と並べると、売れるほど赤字が膨らんでいる。件数の多さが損失を隠してしまうのが、安い商品を広告に出したときの落とし穴です。
広告に載せる商品の選び方
仕組みが分かれば、選び方はシンプルです。
売値が高く、粗利の厚い商品を広告の顔にする
品揃えの中から、売値が高く、原価を引いた粗利がしっかり残る商品を広告の入口にします。ROASの見た目だけでなく粗利まで見るのは、売値が高くても粗利が薄い商品では、ROASが良くても手元にお金が残らないからです。広告費を払えるのは売上ではなく粗利です。
単品で安い商品は、売値を上げた形に組み直して出す
主力がもともと低価格帯という場合は、商品そのものを諦めるのではなく、広告に載せる「単位」を変えます。3個セット、まとめ買い、ギフト仕様、関連商品との詰め合わせ。1回の購入額が上がる形に組み直してから広告に出せば、同じ商品でも先ほどの計算式の分子が変わります。
安い商品は、広告ではなく店内で売る
広告は、お金を払ってお客様を連れてくる場所です。対して、一度サイトに来た方への「あわせて買い」の提案、商品に同梱する案内、購入者へのメールでの紹介には、クリック費用がかかりません。安い商品の売り場はこちらです。高い商品で連れてきて、安い商品は店内で買い足してもらう。広告と店内の役割を分けると、品揃え全体が無理なく動きます。
例外:繰り返し買われる商品は、別の計算になる
ひとつだけ例外があります。定期購入や消耗品のように、一度買った方が繰り返し買ってくれる商品です。この場合は初回の売値ではなく、その方が累計でいくら買ってくれるか(顧客生涯価値)で採算を考えるため、初回が安くても広告に出す判断があり得ます。ただしその場合も、「1人のお客様を獲得するのに、いくらまで広告費を払えるか」を先に計算してから出す、という順番は変わりません。
まとめ
ECの広告でROASを左右する最大の要因は、運用の巧拙ではなく、広告に載せる商品の売値です。クリックの値段は商品の値段に比例しないため、同じ広告費なら売値の高い商品を出すほど効率が上がります。
安い商品はなるべく広告に出さない。出すなら、セットやギフト仕様など売値を上げた形に組み直す。安い商品の売り場は広告ではなく店内に置く。繰り返し買われる商品だけは、累計の購入額で採算を別に計算する。
広告の成果に悩んだら、文章や画像の前に、まず「いま広告に載せている商品はいくらか」を確かめてみてください。
EQUITY / CONSULTATION
どの商品を広告の顔にするか、一緒に決めます
エクイティは、ECブランドの広告を専門に扱う零株式会社の広告代理店です。品揃えと粗利を伺ったうえで、広告に載せる商品の選定から、ブランドを毀損しない表現の設計までを担当します。初回の監査は無料です。
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