成果の出るGoogle広告のキャンペーン・広告グループの組み方
「キャンペーンと広告グループ、どう分ければいいの?」「採用と集客を1つのキャンペーンにまとめてもいい?」——Google広告の成果は、配信を始める前の"階層設計"でほぼ決まります。本記事では、唯一の正解がないこのテーマに対し、絶対に外してはいけない原則と、コトラーのマーケティング理論に基づく「ペルソナ単位キャンペーン」という弊社の答えを、運用代理店の現場目線で徹底解説します。
00 はじめに
Google広告の管理画面を初めて開いた人が、まず戸惑うのが「キャンペーン」「広告グループ」「広告」という3つの階層です。どれも似たような言葉に見えて、どこに何を入れればいいのか、どう分ければいいのかが直感的にわかりません。さらにネットで検索すると「キャンペーンは細かく分けろ」という記事もあれば「まとめたほうが学習が進む」という記事もあり、言っていることがバラバラで余計に混乱します。
結論から言えば、この3階層をどう組むかで、Google広告の成果はほぼ決まります。同じ予算、同じ商材、同じクリエイティブでも、階層設計が違うだけでCPA(顧客獲得単価)が2倍も3倍も変わることは、運用の現場では珍しくありません。広告文を磨くよりも、入札単価をいじるよりも、まず「構成(アカウント構造)」を正しく組むことのほうが、はるかにインパクトが大きいのです。
本記事では、次のことを順番に、かつ徹底的に解説します。
- 3階層それぞれの役割——キャンペーン・広告グループ・広告は、それぞれ「何を決める箱」なのか。予算や入札はどこで設定されるのか。
- 唯一の正解はないという前提——なぜ「これが絶対正しい構成」が存在しないのか。それでも外してはいけない原則は何か。
- 機械学習がキャンペーン単位で回るという絶対原則——これを理解していないと、どんなに良いクリエイティブを作っても成果が頭打ちになる理由。
- でもやるんだよ流の組み方——コトラーのマーケティング理論に基づき、ペルソナ単位でキャンペーンを立てるという実践的な答え。
「なんとなく」で組まれたアカウントを、「理由を説明できる」構成に作り変える。それだけで、広告の成果は静かに、しかし確実に変わります。では、土台となる3階層の基礎から見ていきましょう。
01 そもそもキャンペーン・広告グループ・広告とは?3階層の基礎
まずは言葉の定義からです。Google広告のアカウントは、大きく3つの階層(レイヤー)でできています。上から順に「キャンペーン」「広告グループ」「広告」です。この入れ子構造を正しく理解することが、すべての出発点になります。
├─ 📢 キャンペーン … 予算・入札戦略・配信地域・期間を決める
│ ├─ 📂 広告グループ … キーワード/ターゲティング/クリエイティブをまとめる
│ │ ├─ 🖼 広告(クリエイティブ) … 実際にユーザーに表示される広告文・バナー
│ │ └─ 🖼 広告(クリエイティブ)
│ └─ 📂 広告グループ
└─ 📢 キャンペーン
キャンペーン|「予算と戦略」を決める最上位の箱
キャンペーンは、3階層のうち最も上位にある単位です。ここで決めるのは、主に次のような「お金と配信の枠組み」です。
- 1日あたりの予算(日予算):いくらまで使うか。予算はキャンペーン単位でしか設定できません。広告グループ単位では予算を切れない、という点が極めて重要です。
- 入札戦略:コンバージョン数の最大化、目標CPA、目標ROASなど、Googleの機械学習にどう最適化させるかの方針。
- キャンペーンタイプ:検索(リスティング)、ディスプレイ、P-MAX、デマンドジェネレーション、動画など、どの面に配信するか。
- 配信地域・言語・期間・時間帯:どこに、いつ、誰の言語で配信するか。
イメージとしては、キャンペーンは「ひとつの作戦」や「ひとつの財布」です。この財布から出るお金が、配下の広告グループへとどう配分されるかは、Googleの機械学習が自動で判断します。だからこそ、何をひとつの財布にまとめるかという設計が、成果を大きく左右するのです。
広告グループ|「狙う相手とテーマ」をまとめる中位の箱
広告グループは、キャンペーンの配下に置く中間の単位です。ここでまとめるのは、主に次の2つです。
- ターゲティング:検索広告ならキーワード、ディスプレイやP-MAXならオーディエンス(興味関心・年齢・地域などのまとまり)。「誰に・どんな状況で出すか」を決めます。
- 広告クリエイティブの束:その狙いに対して見せる広告文・バナーを、複数まとめておきます。
広告グループは「ひとつのテーマ・切り口」です。検索広告でいえば、関連性の高いキーワードをまとめた箱だと考えるとわかりやすいでしょう。たとえば「パーソナルジム 横浜」と「パーソナルジム 安い」では検索者の意図が違うので、別々の広告グループにして、それぞれに刺さる広告文を当てる——というのが基本の使い分けです。
広告(クリエイティブ)|ユーザーが実際に目にするもの
広告(クリエイティブ)は、最も下位にある、ユーザーが実際に画面で目にするものです。検索広告なら見出しと説明文、ディスプレイやSNSならバナー画像や動画がこれにあたります。
1つの広告グループの中に、複数の広告クリエイティブを入れておくのが定石です。たとえば「値段の安さを訴求するバナー」と「品質の高さを訴求するバナー」の2本を入れておけば、どちらがその相手に効くかをGoogleが自動でテスト・配信してくれます。クリエイティブは「同じ相手に対する、見せ方の複数パターン」だと理解してください。
3階層の役割を一言で:キャンペーン=「いくら・どこに・どんな戦略で(お金と方針)」、広告グループ=「誰に・どんなテーマで(狙いとターゲティング)」、広告=「どう見せるか(クリエイティブ)」。この役割分担を頭に入れておけば、「これはどの階層で設定すべきか」で迷わなくなります。
02 大前提:組み方に「唯一の正解」はない
ここで、多くの記事が言い切ってしまうことに、あえて水を差します。キャンペーン・広告グループの組み方に、唯一の正解は存在しません。
これは逃げではなく、運用の本質です。最適な構成は、事業内容・商材・予算規模・目標・社内体制・運用フェーズによって変わります。さらに言えば、同じ案件でも運用者によって組み方が違うことは普通にあり、そこには「好み」や「運用思想」も反映されます。月予算300万円のECと、月予算20万円の地域密着パーソナルジムでは、当然ながら最適な分け方はまったく違うのです。
なぜ「正解」が決まらないのか
理由はシンプルで、構成設計には常にトレードオフがあるからです。代表的なジレンマが「細かく分けるか、まとめるか」です。
- 細かく分けると:狙いごとに広告文や入札を制御しやすく、レポートも見やすくなる。一方で、1キャンペーンあたりのコンバージョン数が少なくなり、機械学習が十分なデータを集められず、最適化が進みにくくなる。
- まとめると:1キャンペーンにデータが集約され、機械学習が速く・安定して回る。一方で、異なる狙いが混ざり、「誰にいくら使ったか」が見えにくく、制御も粗くなる。
どちらにも長所と短所があり、「絶対こっち」とは言えません。だからこそ、自分の案件の予算とデータ量、そして「何を見たいか・何を制御したいか」に応じて、バランスを取る判断が必要になるのです。
「正解はない」が「原則はある」
ただし——です。「唯一の正解はない」は「何でもいい」という意味ではありません。正解の幅はありますが、その幅を縁取る絶対に外してはいけない原則は確かに存在します。それが次章で解説する「機械学習はキャンペーン単位で回る」という事実です。
この原則を理解せずに「好みで」組んでしまうと、どれだけ広告文を磨いても、入札をいじっても、成果が出ないアカウントが出来上がります。逆に、この原則さえ押さえておけば、あとは案件に応じて自由に設計してよい。料理でいえば「火加減と下ごしらえ」は外せないが、味付けは自由、というのに近い感覚です。
この章の本質:組み方に唯一の正解はなく、事業・予算・運用者の思想によって最適解は変わる。だが「正解の幅」を決める絶対原則は存在する。「正解はない」を口実に、原則すら無視してはいけない。
03 ただし絶対原則:機械学習はキャンペーン単位で回る
本記事で最も大事な一行を、先に書きます。
機械学習(自動入札の最適化)は、キャンペーン単位で回る。
これは好みや流派の話ではなく、Google広告という仕組みの技術的な事実です。現代のGoogle広告は、「コンバージョン数の最大化」「目標CPA」「目標ROAS」といった自動入札(スマート自動入札)が中心になっています。この自動入札は、入力された大量のシグナル——検索語句、時間帯、デバイス、地域、ユーザーの行動傾向など——を学習し、「今この瞬間、このユーザーに、いくらで入札すれば成果につながりやすいか」を予測します。
そして、この学習が行われる単位が「キャンペーン」なのです。広告グループ単位ではありません。キャンペーンに溜まったコンバージョンデータをまとめて学習し、その結果を配下の広告グループへ配分していきます。
だから「キャンペーンに混ぜ物をする」と学習が壊れる
ここから導かれる結論はシンプルです。狙いや目的が異なるものを、ひとつのキャンペーンに同居させてはいけない、ということです。
なぜなら、機械学習は「このキャンペーンの中で起きたコンバージョンは、すべて同じ性質のものだ」という前提で学習を進めるからです。もし1つのキャンペーンの中に、まったく性質の違うコンバージョン(たとえば「採用応募」と「来店予約」)が混在していたら、学習データは汚れます。Googleは「どっちに最適化すればいいのか」がわからなくなり、結果としてどちらにも最適化しきれない、中途半端な配信になってしまうのです。
学習には「量」も必要——分けすぎも禁物
一方で、機械学習はある程度のコンバージョン数(データ量)がないと、安定して回りません。一般に「1キャンペーンあたり月30件程度のコンバージョン」が、学習がまともに進む目安とされます(商材や入札戦略によって前後します)。
つまり、第2章で触れたトレードオフの正体はこれです。「狙いが違うものは分ける」べきだが、「分けすぎてデータが薄くなる」と学習が回らない。この2つの間で、ちょうどいい粒度を見つけることが、構成設計の核心なのです。性質が違うものは分ける、しかし不必要に細切れにはしない——この感覚を持てるかどうかが、運用者の腕の差になります。
絶対原則のまとめ:機械学習はキャンペーン単位で回る。だから①性質・目的の違うものは別キャンペーンに分ける、②ただし1キャンペーンに十分なコンバージョンデータが溜まる粒度を保つ。この2点が、すべての構成設計の土台になる。
04 やってはいけない組み方|パーソナルジムの「採用×集客」同居
原則を、具体例で体感してもらいましょう。あるパーソナルジムが、Google広告で2つの目的を同時に達成したいとします。
- 集客:体験トレーニングに来てくれる「お客様」を増やしたい。
- 採用:一緒に働いてくれる「トレーナー(従業員)」を採用したい。
このとき、もし「ジムのキャンペーン」というひとつのキャンペーンの中に、「集客」と「採用」の2つの広告グループを並べて入れてしまったら——これは、典型的なNGの組み方です。
├─ 📂 広告グループ:集客(体験トレーニングに来てほしいお客様向け)
└─ 📂 広告グループ:採用(トレーナーとして働きたい人向け)
なぜダメなのか?相手も成果も「別物」だから
「集客」と「採用」では、狙う相手も、達成したいゴールも、まったくの別物です。
- 狙う相手が違う:集客のターゲットは「痩せたい・鍛えたい消費者」。採用のターゲットは「フィットネス業界で働きたい求職者」。検索する言葉も、響くメッセージも、行動パターンも、ほとんど重なりません。
- コンバージョンの中身が違う:集客のゴールは「体験予約」、採用のゴールは「応募」。同じ「1コンバージョン」でも、ビジネス上の意味も、適正な獲得単価もまったく違います。
これを1キャンペーンに入れると、第3章で説明したとおり、機械学習は「採用応募」と「体験予約」という性質の違うコンバージョンを同じ箱で混ぜて学習してしまいます。Googleは「このキャンペーンでは、どういう人にいくらで入札すれば成果が出るのか」を見失い、予算配分も歪みます。求職者向けの配信に集客予算が吸われたり、その逆が起きたりして、結局どちらの成果も中途半端になるのです。
正しくは「キャンペーンを分ける」
解決はシンプルです。目的が違うのだから、キャンペーンごと分けます。
└─ 📂 広告グループ(テーマ別に複数)
📢 キャンペーン:パーソナルジム|採用 … 応募に最適化
└─ 📂 広告グループ(職種・条件別に複数)
こうすれば、それぞれのキャンペーンが「集客なら集客」「採用なら採用」の純粋なデータだけで学習します。予算も別々に管理でき、「集客にいくら、採用にいくら使ったか」も一目でわかります。これが、機械学習をまっとうに働かせる組み方です。
半理解は危険:「キャンペーンと広告グループの違い」をなんとなくしか理解していないと、この採用×集客の同居のようなミスを平気でやってしまいます。逆に「機械学習はキャンペーン単位で回る」という一点さえ腹落ちしていれば、「目的が違う=キャンペーンを分ける」という判断が自然にできるようになります。ここは"半理解"で済ませず、しっかり腹に落としておくべきポイントです。
05 でもやるんだよの答え|ペルソナ単位でキャンペーンを立てる
では、私たち「でもやるんだよ」(零株式会社)は、具体的にどう組んでいるのか。ここからが本記事の核心です。私たちは、コトラーのマーケティング理論に基づき、ペルソナごとに集客することを徹底しています。そして、その思想をアカウント構造にそのまま反映させます。すなわち——
キャンペーンは、ペルソナごとに立てる。
なぜ「ペルソナ単位」なのか
近代マーケティングの父フィリップ・コトラーは、マーケティングの進化を1.0から5.0として体系化しました。その到達点である5.0の核心が、セグメント・オブ・ワン——「顧客一人ひとりに最適化する」という考え方です。同じ「30代女性」でも、求めるものも響く言葉もバラバラな時代に、十把一絡げの訴求は刺さりません。だからこそ、「誰に向けて」を徹底的に絞り込んだペルソナを起点に集客を設計する——これが私たちの一貫した方針です。(詳しくは コトラーのマーケティング1.0〜5.0完全解説 や セグメント・オブ・ワンとは をご覧ください。)
そして、ここに第3章の絶対原則が見事に重なります。機械学習はキャンペーン単位で回る。ペルソナが違えば、響く言葉も、行動も、適正な獲得単価も違う——つまり「性質の違うコンバージョン」になる。だったら、ペルソナごとにキャンペーンを分けるのが、機械学習の観点からも、マーケティングの観点からも、両方とも正しいのです。マーケティング理論と広告アルゴリズムの要請が、ここで一致します。
3階層に役割を割り当てる
私たちは、Google広告の3階層に、次のように意味を割り当てます。これが「でもやるんだよ流」の型です。
| 階層 | 割り当てる意味 | 例(パーソナルジムの集客) |
|---|---|---|
| キャンペーン | ペルソナ(誰に売るか) | 男性A(30代・運動不足のビジネスマン)/女性A(20代後半・結婚式前に痩せたい) |
| 広告グループ | 企画・切り口(どんなテーマで誘うか) | 「短期集中ダイエット企画」/「リバウンド防止プログラム」 |
| 広告(クリエイティブ) | 訴求の見せ方(どう表現するか) | 「値段が安い」訴求バナー/「品質が高い」訴求バナー |
季節商材でわかりやすく言い換えると、こうも表現できます。キャンペーン=ペルソナ(男性A、女性A)、広告グループ=企画(花火大会、春のお花見)、広告クリエイティブ=表現(安さ訴求バナー、品質訴求バナー)。「誰に → どんな企画で → どう見せるか」が、上から下にきれいに流れていくのです。
でもやるんだよ流の型:キャンペーン=ペルソナ、広告グループ=企画・切り口、広告=訴求の見せ方。コトラーのセグメント・オブ・ワンという思想と、機械学習はキャンペーン単位で回るという技術的事実が、この一つの型の中で両立する。
06 具体例|キャンペーン→広告グループ→広告の組み立て方
抽象論だけではイメージが湧きにくいので、実際のアカウント構造に落とし込んでみましょう。パーソナルジムの「集客」を、ペルソナ単位で組むとこうなります。
├─ 📂 広告グループ:企画「2ヶ月集中・体脂肪改善プログラム」
│ ├─ 🖼 広告:価格訴求バナー「初回◯円・分割OK」
│ └─ 🖼 広告:品質訴求バナー「医学的根拠・専属トレーナー」
└─ 📂 広告グループ:企画「忙しい人向け・1回30分プラン」
├─ 🖼 広告:時短訴求バナー
└─ 🖼 広告:通いやすさ訴求バナー
📢 キャンペーン:女性A(20代後半・結婚式前に痩せたい花嫁)
├─ 📂 広告グループ:企画「ブライダル専用・背中美人プログラム」
│ ├─ 🖼 広告:価格訴求バナー
│ └─ 🖼 広告:品質・実績訴求バナー(ビフォーアフター)
└─ 📂 広告グループ:企画「式まで逆算・期間別プラン」
└─ 🖼 広告(複数)
キャンペーン層:ペルソナで分ける
「男性A」と「女性A」は、痩せたい理由も、響く言葉も、検索する時間帯も、適正なCPAもまったく違います。だから別キャンペーンにし、それぞれに予算と入札戦略を割り当てます。これにより、機械学習は「男性Aというペルソナにとっての最適配信」と「女性Aにとっての最適配信」を、それぞれ純度の高いデータで学習できます。
予算配分も自在です。「今月は花嫁需要が高いシーズンだから女性Aに厚く」「健康診断シーズンだから男性Aを増やす」といった調整が、ペルソナ単位でダイレクトにできます。
広告グループ層:企画・切り口で分ける
同じ「男性A」でも、刺さる切り口は複数あります。「2ヶ月集中で本気で変えたい」人もいれば、「忙しいから時短で続けたい」人もいる。これらは同じペルソナの中の企画違いなので、広告グループで分けます。広告グループを分けることで、どの企画(切り口)が一番反応が良いかを比較でき、勝ち筋を見つけられます。
広告層:訴求の見せ方で複数用意する
同じ企画に対して、「価格の安さ」で訴えるバナーと「品質の高さ」で訴えるバナーの両方を入れておきます。どちらがそのペルソナ・企画に効くかは、人間の予想より機械のテストのほうが正確です。複数のクリエイティブを入れておけば、Googleが自動で配信比率を最適化し、勝ちクリエイティブを育ててくれます。
読み解き方:「誰に(キャンペーン=ペルソナ)→ どんな企画で(広告グループ)→ どう見せて(広告=クリエイティブ)」という3段の問いに、上から答えていくだけ。この問いがそのまま階層構造になっているから、迷いがなく、後から見ても意図が一目でわかる。
07 この組み方が強い理由|機械学習の最適化と振り返り精度
ペルソナ単位でキャンペーンを立てるこの型には、大きく2つの強みがあります。「機械学習が最も適切に回る」ことと、「後から振り返ったときに、誰にいくら・どんな内容で使ったかが完璧にわかる」ことです。
強み①:機械学習が最も適切に回る
これまで繰り返してきたとおり、機械学習はキャンペーン単位で回ります。ペルソナごとにキャンペーンを分けておけば、各キャンペーンには「そのペルソナの、純度の高いコンバージョンデータ」だけが溜まります。混ぜ物がないので、Googleは「このペルソナには、こういう人に、この時間に、この単価で入札すれば成果が出る」というパターンを、クリアに学習できます。
逆に、複数ペルソナを1キャンペーンに混ぜていたら、学習データはノイズだらけになり、最適化の精度は落ちます。ペルソナ単位の分割は、機械学習に「きれいな教材」を渡す行為なのです。
強み②:振り返り(レポーティング)が圧倒的に正確になる
運用は「回して終わり」ではありません。毎月、「何がうまくいって、何がダメだったか」を振り返り、次月に活かすことが本質です。このとき、ペルソナ=キャンペーンになっていると、レポートが驚くほど読みやすくなります。
- 誰に使ったか:キャンペーン名がペルソナそのものなので、「男性Aに◯円、女性Aに◯円使った」が一目でわかる。
- いくらで獲れたか:ペルソナごとのCPA・ROASが比較でき、「どのペルソナが効率的か」が即座に判断できる。
- どんな内容が効いたか:広告グループ(企画)と広告(訴求)まで降りれば、「どの企画・どの訴求が当たったか」まで分解できる。
「なんとなく分けた」アカウントだと、レポートを見ても何が起きているのか解釈できません。ペルソナ・企画・訴求という"意味"が階層に埋め込まれているからこそ、数字が物語になり、次の打ち手が見えてくるのです。これは、運用の継続的な改善(PDCA)を回すうえで決定的な差になります。
注意点:予算が小さい場合の現実解
最後に正直なことも書きます。ペルソナを細かく分けすぎると、第3章で触れたとおり、1キャンペーンあたりのコンバージョンが薄くなり、機械学習が回りきらないリスクがあります。月予算が小さい案件では、まずは最重要ペルソナ1〜2本に絞ってキャンペーンを立て、データが溜まり成果が安定してから分割を増やす——という段階的な進め方が現実的です。
「理想の構造」と「今の予算で学習が回る構造」のバランスを取る。この見極めこそ、私たちのような運用代理店が価値を出す部分です。理論を知ったうえで、目の前の予算に合わせて最適な落としどころを設計する。それが、教科書通りのマーケティングを"現場で実装する"ということなのです。
08 Google以外も同じ|Meta・Yahoo!・X・LINEの共通構造
ここまでGoogle広告を題材にしてきましたが、安心してください。この「キャンペーン → 広告グループ → 広告クリエイティブ」という3階層構造は、Google広告に限った話ではありません。Meta(Facebook・Instagram)広告、Yahoo!広告、X(旧Twitter)広告、LINE広告——主要な運用型広告は、名前こそ違えど、ほぼ同じ3階層でできています。
| 媒体 | 最上位(予算・最適化) | 中位(ターゲティング) | 最下位(クリエイティブ) |
|---|---|---|---|
| Google広告 | キャンペーン | 広告グループ | 広告 |
| Meta広告 | キャンペーン | 広告セット(アドセット) | 広告 |
| Yahoo!広告 | キャンペーン | 広告グループ | 広告 |
| X広告 | キャンペーン | 広告グループ | 広告(ツイート) |
| LINE広告 | キャンペーン | 広告グループ | 広告 |
呼び方が「広告グループ」か「広告セット」かといった違いはあれど、構造の思想は共通です。そして——ここが重要ですが——「機械学習が上位の予算単位で回る」という原則も、媒体をまたいで共通しています。Metaであれば学習はキャンペーン〜広告セット単位、という具合に、どの媒体でも「最適化が走る単位に、性質の違うものを混ぜない」という鉄則は変わりません。
一度わかれば全媒体に効く:3階層の役割と「機械学習を回す単位を汚さない」という原則は、Google・Meta・Yahoo!・X・LINEのどれにも通用する普遍知識です。媒体ごとに一から覚え直す必要はありません。本記事で身につけた構造設計の考え方は、どの媒体に行っても、そのまま武器になります。(媒体ごとの使い分けは Google広告とMeta広告の違い もどうぞ。)
09 まとめ
Google広告のキャンペーン・広告グループの組み方について、長くなりましたが、本質は次の数行に集約されます。
- 3階層の役割:キャンペーン=予算と戦略、広告グループ=狙いとターゲティング、広告=クリエイティブ。
- 唯一の正解はない:事業・予算・運用思想で最適解は変わる。だが「正解の幅」を縁取る絶対原則はある。
- 絶対原則:機械学習はキャンペーン単位で回る。だから、性質・目的の違うものを1キャンペーンに混ぜてはいけない(採用×集客の同居はNG)。ただし分けすぎてデータが薄くなるのも禁物。
- でもやるんだよの答え:コトラーのセグメント・オブ・ワンに基づき、キャンペーン=ペルソナ、広告グループ=企画、広告=訴求の見せ方で組む。
- その効能:機械学習が最も適切に回り、かつ「誰に・いくら・どんな内容で使ったか」が後から完璧に振り返れる。
- 普遍性:この構造と原則は、Meta・Yahoo!・X・LINEにも共通する。一度わかれば全媒体に効く。
広告運用というと、つい「キーワードの選び方」や「入札単価の調整」「広告文のテクニック」といった枝葉に目が行きがちです。しかし、本当に成果を分けるのは、その手前の「構造をどう組むか」です。構造が正しければ、機械学習が勝手に賢くなり、振り返りからは次の打ち手が見えてきます。構造が間違っていれば、どれだけ枝葉を磨いても成果は頭打ちになります。
「なんとなく」で組まれたアカウントを、「理由を説明できる」アカウントへ。その第一歩が、本記事を読んだ今日です。あなたのアカウントは、ペルソナの顔が見える構造になっているでしょうか?
10 よくある質問(FAQ)
Q. キャンペーンと広告グループ、結局どう使い分ければいい?
ざっくり言えば、「目的・ペルソナが違うならキャンペーンで分ける」「同じ相手への企画・切り口の違いなら広告グループで分ける」です。予算と機械学習の最適化はキャンペーン単位なので、別々に最適化したいもの・別々に予算管理したいものは、必ずキャンペーンを分けます。一方、同じ相手の中での見せ方のバリエーションは、広告グループ以下で分ければ十分です。
Q. 1つの広告グループに広告は何本入れるべき?
検索広告なら、レスポンシブ検索広告を1〜2本に、見出し・説明文のバリエーションを多めに用意するのが基本です。ディスプレイやSNSなら、訴求軸の異なるクリエイティブを2〜4本ほど入れ、機械にテストさせるのが定石です。重要なのは本数そのものより、「価格訴求」「品質訴求」のように訴求軸が異なるパターンを入れること。同じような広告を並べてもテストになりません。
Q. キャンペーンを細かく分けたら、かえって成果が落ちました。なぜ?
分けすぎて、1キャンペーンあたりのコンバージョン数が機械学習の必要量(目安:月30件程度)を下回った可能性が高いです。データが薄いと自動入札が学習しきれず、配信が不安定になります。予算が小さい場合は、ペルソナを欲張って細分化せず、まず主要1〜2本に集約し、データが溜まってから段階的に分けるのが安全です。
Q. P-MAX(パフォーマンス最大化)の場合も同じ考え方でいい?
基本思想は同じです。P-MAXは広告グループの代わりに「アセットグループ」を使いますが、「機械学習はキャンペーン単位で回る」「目的・ペルソナが違うものは混ぜない」という原則は変わりません。P-MAXでも、商材やターゲットの性質が大きく異なるなら、キャンペーン(またはアセットグループ)を分けて、純度の高いデータで学習させるのが定石です。
Q. 結局、自社で正しく組めるか不安です。
構造設計は「理屈」と「現場の勘所」の両方が要る領域です。とくに「予算に対してどこまで分けるか」の見極めは、経験がものを言います。判断に迷う場合は、私たちのような運用代理店に一度アカウントを見てもらうのが近道です。でもやるんだよでは、コトラー理論に基づくペルソナ設計から、機械学習が回る構造設計まで、無料でご相談を承っています。