こんにちわ。零株式会社のメルマガ運用チームです。

当社は広告代理店と営業代行の会社をやっているのですが、どんな業界の会社さんとお話ししていても、行き着く結論はほぼ同じです。集客経路が少なければ少ないほど、事業が安定する確率は下がります。

デジタル広告一本で集客する。テレアポ一本で集客する。HP一本で集客する。ほとんどの業界で、これは難しいと私は思っています。唯一、記事1000本で入口を分散させる集客だけは、100歩譲ってありだと思います。

ただ、これを「分散したほうが安心だよね」という感覚論で終わらせたくないので、今日はコトラーのマーケティング理論で説明します。使うのは、4P(とくに流通とプロモーションミックス)、STP、B2Bの購買センター、マーケティング4.0の5A、の4つです。

▼集客が一本足だと、なぜ不安定になるのか

理由は3つあります。

①止まる理由が、自社の外にある

広告はアカウントが停止されたり、審査で止まったり、入札競争でCPCが跳ねたりします。HPや記事は、検索エンジンの更新で順位が動きます。テレアポは、リストが尽きる、担当者が辞める、電話に出てもらえる確率が下がる、といった形で効かなくなります。どれも自社の努力ではコントロールできない理由で、ある日突然落ちます。経路が一本だと、それがそのまま売上の落ち込みになります。

②一本に積むほど、1円あたりの効率は悪くなる

広告費を倍にしても、問い合わせは倍にはなりません。条件の近い人から順に取り尽くし、同じ人に何度も当たるようになるので、あとから増やした分ほど獲得単価が高くなります。経路を一本に絞るというのは、この限界にずっと正面からぶつかり続けるということです。

③比べるものがないので、原因の切り分けが遅れる

経路が一本だと、CPAが悪化したときに「市況のせいか、運用のせいか、商品のせいか」を切り分けられません。ほかの経路が普通に取れていれば、商品のせいではないとすぐ分かります。比較対象があって初めて、原因を絞り込めます。

仮の数字で見てみます。月の新規問い合わせが30件ある会社が2社あるとします。

A社:広告10割に近い会社

  • 内訳は、広告27件、そのほか3件
  • 広告のCPCが1.5倍になり、予算は据え置きだと、広告経由は約3分の2の18件に。合計21件で、30%減
  • 広告アカウントが止まると、残るのは3件。90%減

B社:4経路に分かれている会社

  • 内訳は、広告10件、記事8件、テレアポ6件、紹介6件
  • 同じくCPCが1.5倍になると、広告経由は約7件に。合計約27件で、約1割減
  • 広告アカウントが止まっても、残りは20件。3分の1減

B社も、広告が止まれば痛いことは変わりません。違うのは、痛いで済むのか、止まるのかです。この差が、安定するかどうかの差です。

▼コトラーの教科書は、チャネルを一本にせよとは書いていない

コトラーの教科書では、4P(製品・価格・流通・販促)の「流通」の中で、複数のチャネルを併用するマルチチャネルの仕組みが扱われています。複数のチャネルを組み合わせると、市場のカバー範囲が広がり、チャネルごとの費用を抑えられ、顧客に合わせた売り方ができる。その一方で、チャネル同士の対立や、管理の難しさも出てくる、という整理です。

「販促」も同じです。コトラーは販促の手段を、広告、販売促進、人的販売、PR、ダイレクトマーケティングに分け、これらを組み合わせて使うもの(プロモーションミックス)として扱います。そして、手段ごとにバラバラに動かすのではなく、メッセージを揃えて統合的に運用する考え方(統合型マーケティング・コミュニケーション)を示しています。

集客の経路に置き換えると、Web広告は広告、テレアポは人的販売やダイレクトマーケティング、HPや記事は自社で持つメディア、紹介や口コミはPRに近い位置にあります。教科書の側が、そもそも手段の組み合わせを前提に書かれているわけです。広告一本、テレアポ一本というのは、ミックスのうち1つしか使っていない状態です。

▼買う人は、経路ごとに別の場所にいる

STPのセグメンテーションの話です。同じ商品を買う人でも、情報の探し方は違います。検索して比べる人、SNSで流れてきたものに反応する人、知人の紹介でしか動かない人、電話で説明を受けたほうが決めやすい人。経路が一本だと、その経路を通る人だけが見込み客になり、残りは競合のほうへ流れます。

B2Bでは、これがもっとはっきり出ます。コトラーは法人の購買を、使う人、影響を与える人、買う人、決める人、情報の門番という役割に分けて説明しています(購買センター)。現場の担当者は検索や広告で見つけてくるのに、決裁者は知人の紹介や、電話口のひと言で動く。こういうことは実際によく起きます。担当者に届く経路を一本持っていても、決裁者に届く経路がなければ、商談は途中で止まります。

▼5Aで見ると、経路ごとに受け持つ段が違う

マーケティング4.0で示された5Aは、認知(Aware)、訴求(Appeal)、調査(Ask)、行動(Act)、推奨(Advocate)の5段階です。顧客はおおむねこの順に進みます(実際には行ったり来たりします)。それぞれの段を受け持ちやすい経路は、次のように分かれます。

5Aの段受け持ちやすい経路その経路だけだと起きること
認知・訴求Web広告、SNS知ってはもらえるが、調べにきた人を受け止める先がない
調査HP、記事、事例ページ調べにくる人はいるが、そもそも知ってもらう入口が足りない
行動テレアポ、営業、フォーム背中は押せるが、温まっていない相手への電話になる
推奨既存顧客の紹介、口コミ量が読めず、これだけでは売上計画を立てられない

この対応は当社の現場感覚で置いたものです。HPで認知を取る会社もありますし、広告が調査まで受け持つ場合もあります。それでも、一本の経路で5段ぶんを全部こなせることはまずありません。

広告一本の会社でよくある止まり方は、広告で知った人が社名で検索して、HPの実績や事例の薄さを見て離れていくパターンです。テレアポ一本の会社なら、電話を受けた相手が社名を検索したときに何も出てこなくて、話が進みません。HPだけで待つ会社は、すでに探している人にしか見つけてもらえません。どれも、足りない段を別の経路が埋めていれば、通れたはずの人たちです。

▼記事1000本で分散する、は100歩譲ってあり。ただし分散の中身は違う

記事を1000本書けば、1000通りの検索意図に入口ができます。検索する人の悩みは記事ごとに違うので、STPで言えば、別々のセグメントを別々の入口で拾っている形です。1本が外れても全体への影響が小さい点も含めて、分散としては筋が通っています。

それでも「100歩譲って」と付けるのは、入口が1000あっても、そこへ人を連れてくるのは検索エンジン1社だからです。経路の数で数えれば1本です。アルゴリズムの更新や、量産コンテンツへの評価の変化が起きれば、1000本が同じ日に同じ方向へ動きます。Googleは2024年3月にスパムポリシーを更新し、順位を上げる目的で大量に作られたコンテンツ(scaled content abuse)を、はっきり対象にしました。本数で稼ぐやり方は、この種のルール変更をもろに受けます。

1000本という数に安心を求めるなら、本数よりも、その入口の先で別の経路とつながっているかを見たほうがいいと思います。記事から資料請求やメルマガ登録を取って営業が追う。記事を読んだ人にリターゲティング広告を当てる。こうして別の経路と合流していれば、検索への依存は和らぎます。

▼分散は薄まきではない。経路の組み方

経路を増やすと言うと、全部に少しずつ予算と人を振るイメージになりがちですが、それでは全部が中途半端に終わります。コトラーがマルチチャネルの難しさとして、コストと管理の負担を挙げているのもこの点です。当社が組むときの考え方は、次の5つです。

①最大の経路が、全体の何割かを数える

  • 直近3か月の新規リードを、経路別に数える
  • 1つの経路が半分を超えていたら黄信号、というのが私の目安です(厳密な基準ではなく経験則です)

②主力を1本、補完を2〜3本にする

  • 予算と人の大半は主力に置く
  • 補完の役目は、主力が止まったときにゼロにならないことと、主力が拾えない層を拾うこと

③補完は、5Aの穴を埋める順に選ぶ

  • 広告が主力なら、まず調査の受け皿(HP・事例)、次に行動のフォロー(営業)
  • 流行っている手段だから、という理由では選ばない

④立ち上げは1経路ずつ

  • 3経路を同時に始めると、どれが効いたのか分からなくなる
  • ひとつが回り始めてから次に進む

⑤経路ごとではなく、受注まで1本の台帳で見る

  • コトラーが挙げたチャネル間の対立は、広告担当とテレアポ担当が成果を取り合う形で現場に出てくる
  • リードがどの経路から入り、どの接触を経て受注したかをSFAで一本にまとめ、経路別の受注単価で比べる
  • CPAが高く見える経路でも、受注率が高ければ優秀なことがある

⑤は、広告もテレアポもリード獲得の手段に過ぎないという、以前書いた話ともつながります。

▼まとめ

集客経路を複数持つ理由は、止まったときの保険だけではありません。買う人は経路ごとに別の場所にいて、5Aの各段を受け持つ経路も違うので、一本だとその分のお客さんを取り逃がします。

最初にやることは、直近3か月の新規リードを経路別に数えることです。最大の経路が半分を超えていたら、5Aのどの段が空いているかを見て、次に足す経路を1つ決めてください。