ECの広告でROASを上げる鉄則安い商品はなるべく出さず、売値が高い商品に広告費を寄せる|Google・Metaカタログ広告の設定方法
同じ広告費を使っても、どの商品を広告に出すかでROAS(広告費用対効果。広告経由の売上を広告費で割った比率)は大きく変わります。結論から書くと、ECの広告でROASを高めたいなら、安い商品はなるべく広告に出さず、売値が高い商品に広告費を寄せるのが鉄則です。理由は単純で、クリック単価は商品の売値にほぼ比例しない一方、ROASの分子になる売上には売値がそのまま効くからです。この記事では、この鉄則が成り立つ理由を計算式と数値例で確認したうえで、GoogleのショッピングキャンペーンやP-MAX、MetaのAdvantage+カタログ広告の機械学習がなぜ放っておくと安い商品に寄っていくのか、配信を高単価商品に寄せる具体的な設定方法、そして鉄則をそのまま当てはめない方がよいケースまで整理します。
- 結論:ROASを上げたいなら、広告に出す商品の「売値」から見直す
- 1. ROASの計算式を分解すると、売値が一番効いていることが分かる
- 2. 数値例:同じ広告費・同じクリック単価で、売値だけを変えてみる
- 3. 「安い方が売れやすい」は、CVRの差でどこまで相殺されるのか
- 4. 機械学習は放っておくと「買われやすい安い商品」に寄っていく
- 5. Google広告(ショッピング・P-MAX)で高単価商品に配信を寄せる設定方法
- 6. Meta広告(Advantage+カタログ広告)で高単価商品に配信を寄せる設定方法
- 7. この鉄則をそのまま当てはめない方がよいケース
- 8. 売値だけでなく、損益分岐ROASと粗利で確認する
- 9. 週次・月次で見る数字と、構成を直す手順
- 10. よくある質問(FAQ)
- 11. まとめ
00 結論:ROASを上げたいなら、広告に出す商品の「売値」から見直す
EC広告のROASが伸びないとき、多くの担当者は入札やクリエイティブ、ターゲティングから直そうとします。それらも効きますが、改善幅が一桁違うレバーが先にあります。「どの商品に広告費を使っているか」です。
- クリック単価は商品の売値にほぼ比例しない。だからクリック1回あたりの期待売上(売値×CVR)が大きい高単価商品ほどROASは上がる
- 購入「件数」を最適化の目標にしたままだと、GoogleもMetaも機械学習が一番買われやすい安い商品に広告費を寄せていく
- 対策は、①購入金額(コンバージョン値)を媒体に送って価値ベースの最適化に切り替える、②カスタムラベルや商品セットで価格帯を分け、低価格帯への配信を絞る、の2つ
- ただし、定期購入で生涯売上が大きい商品や、同梱で注文金額が伸びる商品は例外。最後は売値ではなく注文金額と粗利で判断する
「安い商品の方が買ってもらいやすいのだから、広告も安い商品で出した方が成果が出るのでは」という感覚は、広告を始めたばかりのEC事業者が高確率で持っているものです。この感覚がなぜ逆なのかを、次のセクションから計算で確認していきます。
01 ROASの計算式を分解すると、売値が一番効いていることが分かる
ROAS(広告費用対効果)は、広告経由の売上を広告費で割った比率です。
ROAS = 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100(%)
この式を、運用で動かせる要素に分解してみます。売上は「クリック数 × CVR × 平均注文額」、広告費は「クリック数 × クリック単価(CPC)」なので、
ROAS =(CVR × 平均注文額)÷ CPC
となり、クリック数は分子と分母で打ち消されて消えます。つまりROASは「クリック1回から期待できる売上を、クリック1回の費用で割ったもの」です。配信量をいくら増減させても、この比率そのものは変わりません。
残った3つの変数の性質を見比べると、鉄則の根拠がはっきりします。
| 変数 | 性質 | 運用で動かせる幅 |
|---|---|---|
| CPC(クリック単価) | 媒体のオークションと競合で決まる。商品の売値が10倍でもCPCが10倍になることはない | 入札調整で数十%程度 |
| CVR(購入率) | 価格・商品ページ・送料条件で決まる。価格を上げると下がるが、価格に反比例するほどは下がらないことが多い | LPOや訴求改善で数十%程度 |
| 平均注文額 | どの商品を広告に出すかでほぼ決まる | 商品の入れ替えで数倍〜10倍 |
CPCとCVRの改善は積み重ねの世界で、2倍にするのは簡単ではありません。一方、平均注文額は3,000円の商品をやめて15,000円の商品に広告費を回せば、それだけで5倍です。ROASの式の中で、桁を変えられる変数は平均注文額だけです。だから商品選定が最初のレバーになります。
02 数値例:同じ広告費・同じクリック単価で、売値だけを変えてみる
広告費10万円、CPC100円で1,000クリックを集められるアカウントがあるとします。同じ1,000クリックを、売値の違う3つの商品に割り当てた場合を計算します。CVRは「価格が上がるほど下がる」現実に合わせて、高い商品ほど低く置いています。
| 商品 | 売値 | CVR | 購入件数 | 売上 | ROAS | クリック1回の期待売上 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A(低単価) | 3,000円 | 2.0% | 20件 | 60,000円 | 60% | 60円 |
| B(中単価) | 12,000円 | 1.2% | 12件 | 144,000円 | 144% | 144円 |
| C(高単価) | 30,000円 | 0.6% | 6件 | 180,000円 | 180% | 180円 |
商品Cは商品Aに対して売値が10倍ですが、CVRは10分の1ではなく3分の1強にしか落ちていません。この「価格の差ほどCVRは落ちない」という非対称が、鉄則の正体です。
右端の「クリック1回の期待売上」に注目してください。CPCが100円なので、商品Aはクリックされるたびに期待値で40円の赤字です。どれだけ入札を調整しても、クリエイティブを磨いても、1クリックの期待売上60円がCPC100円を上回らない限り、商品AのROASが100%を超えることは構造的にありません。
- 「商品Aは20件も売れているから好調」――件数は一番多いのに、売上とROASは一番低い。管理画面の購入件数だけを見ていると、この状態を「成果が出ている」と読み違える
- 「ROASが低いのは運用が下手だから」――出している商品の売値×CVRがCPCに負けていれば、運用技術では覆らない
※表の数字は構造を示すための仮定です。実際のCVRやCPCは商材・媒体で大きく変わるので、同じ表を自社の商品別レポートの実績値で作り直すところから始めてください。
03 「安い方が売れやすい」は、CVRの差でどこまで相殺されるのか
安い商品のCVRが高いこと自体は事実です。問題は「どのくらい高いか」です。売値の差を打ち消すには、売値が10倍ならCVRが10分の1未満まで落ちている必要がありますが、実際の購買行動はそこまで単純に価格へ反比例しません。理由はいくつかあります。
高単価商品のクリックは「質」が高い
30,000円の商品の広告をクリックする人は、価格を見たうえでクリックしています。冷やかしのクリックが相対的に少なく、流入時点で検討が進んでいる。安い商品は気軽にクリックされる分、カートに入れたあと送料を見て離脱する、といった脱落も多くなります。3,000円の商品に送料700円が付くと負担感は2割を超えますが、30,000円の商品なら誤差です。
ROASを一番壊すのは「安いのにCVRも高くない商品」
実際のカタログ配信の商品別レポートを見ると、低単価商品が全部よく売れているわけではありません。安くてCVRが高い商品はまだましで、本当に効率を壊しているのは「安いのにCVRも平凡な商品」です。クリックだけ集めて売上をほとんど返さないので、こうした商品が配信対象に混ざっているだけでアカウント全体のROASが削られます。商品別レポートで「広告費消化の割に売上が小さい商品」を洗い出すと、だいたいこの層が見つかります。
判断基準は「売値×CVRがCPCを上回るか」
広告に出してよい商品かどうかは、セクション2で使った式で機械的に判定できます。商品ごとに「売値×実績CVR」を計算し、実績CPCと比べる。上回っていれば広告に出す意味があり、下回っていれば、その商品への広告費は構造的な赤字です。感覚ではなくこの計算で線を引くのが、商品選定の実務です。
04 機械学習は放っておくと「買われやすい安い商品」に寄っていく
ここからが媒体の機械学習の話です。GoogleのショッピングキャンペーンやP-MAX、MetaのAdvantage+カタログ広告は、どれも「カタログ(商品フィード)を丸ごと渡して、どの商品を誰に見せるかはシステムが決める」タイプの広告です。手動で商品を選ばなくてよいのが利点ですが、システムが何を基準に商品を選んでいるかを理解していないと、鉄則と真逆の配信が自動で出来上がります。
「件数」を目標にすると、安い商品が勝ち続ける
自動入札も配信の最適化も、設定された目標に向かって学習します。目標が「購入件数をできるだけ増やす」や「コンバージョン数ベースの目標CPA」のままだと、システムにとっての正解は「一番購入されやすい商品」です。3,000円の商品と30,000円の商品が同じカタログに入っていれば、CVRが高い3,000円の商品が成果を出しやすい商品として学習され、インプレッションと広告費がそちらへ寄っていきます。媒体は売値の違いを咎めません。件数を頼んだら件数を取りに行くだけです。
この状態のアカウントは、管理画面上はコンバージョンが積み上がって好調に見えます。それなのに売上が伸びない、ROASが上がらない。原因を探すと、広告費の大半が低単価商品に流れていた、というのがECアカウントの定番の構図です。
制御の方法は「物差しを変える」か「対象を絞る」か
機械学習を高単価商品側に向ける方法は、大きく2つしかありません。
- 最適化の物差しを件数から金額に変える:購入金額をコンバージョン値として媒体に送り、Googleなら目標ROAS(コンバージョン値ベースの自動入札)、Metaなら購入価値の最適化・最小ROASを使う。システムの「正解」が件数から金額に変わるので、高単価商品が評価されるようになる
- 配信対象から低価格商品を外す・分ける:Googleはカスタムラベル、Metaは商品セットで価格帯を区切り、低価格帯を除外するか、別キャンペーンに隔離して予算を絞る
実務ではこの2つを併用します。価値ベースの最適化は購入データが貯まるほど精度が出る一方、学習が追いつくまでの期間や、値が計測できていないときの脆さがあります。対象の絞り込みは即日効くので、まず絞り込みで土台を作り、価値最適化で仕上げる順番が扱いやすいです。
どちらの方法でも前提が1つあります。購入金額(値)がトランザクションごとに媒体へ送られていることです。コンバージョン設定が「購入1件=固定値」になっていたり、値が未設定だったりすると、媒体からは3,000円の注文も30,000円の注文も同じ成果に見えます。この状態では価値ベースの最適化は機能しません。設定を触る前に、コンバージョン値の計測から確認してください。
05 Google広告(ショッピング・P-MAX)で高単価商品に配信を寄せる設定方法
Google側の手順です。使う道具は、Merchant Centerのカスタムラベル、キャンペーンの商品絞り込み(リスティンググループ/商品グループ)、コンバージョン値ベースの自動入札の3つです。
手順1:購入金額をコンバージョン値として送る
購入コンバージョンに、注文ごとの実額(トランザクション固有の値)が入っているかを確認します。Googleタグで動的に値を渡すか、GA4の購入イベントをインポートしている場合はeコマースの収益が値として連携されているかを見ます。ここが固定値のままだと、以降の目標ROASは正しく働きません。
手順2:Merchant Centerのカスタムラベルで価格帯を区分する
商品フィードのカスタムラベル(custom_label_0〜4)は、広告側で商品を自由に区分するための属性です(Google Merchant Center ヘルプ)。ここに価格帯を入れます。
例:custom_label_0 に
・10,000円以上 → price-high
・3,000〜9,999円 → price-mid
・3,000円未満 → price-low
フィードを出力するカートシステム側で付与してもよいですし、Merchant Centerのフィードルールで価格属性から自動生成する方法もあります。区切りの金額は、セクション3の「売値×CVRがCPCを上回るか」から逆算して決めます。可能であれば、売値ではなく粗利額で区分する方がさらに精度が上がります(理由はセクション8)。
手順3:キャンペーンを価格帯で分け、低価格帯を絞る
標準ショッピングキャンペーンの場合は、商品グループをカスタムラベルで細分化します。price-lowのグループは除外する(入札しない)か、入札単価を大きく下げます。P-MAXの場合は、アセットグループのリスティンググループでprice-highだけに絞ったキャンペーンを作ります。P-MAXは1つのキャンペーンに全商品を入れると配分が完全に媒体任せになるため、価格帯で意図を持たせたいならキャンペーンを分けるのが実質的に唯一の手綱です(P-MAXの仕組みはGoogle 広告 ヘルプ)。
広告に一切出したくない商品は、リスティンググループから除外するほか、Merchant Center側で該当商品の掲載先からショッピング広告を外す方法もあります。
手順4:目標ROASを価格帯ごとに設定する
入札戦略を「コンバージョン値の最大化(目標ROASあり)」にし、価格帯キャンペーンごとに目標値を変えます(目標ROASの仕様はGoogle 広告 ヘルプ)。price-highは利益の出る水準(損益分岐ROAS+確保したい利益)を目標にし、予算もここへ寄せます。注意点として、キャンペーンを細かく分けすぎると1キャンペーンあたりの購入データが薄くなり、自動入札の学習が安定しません。価格帯の分割は2〜3キャンペーンまでに抑えるのが現実的です。
06 Meta広告(Advantage+カタログ広告)で高単価商品に配信を寄せる設定方法
Meta側の考え方はGoogleと同じで、道具の名前が変わります。カスタムラベルに相当するのが「商品セット」、目標ROASに相当するのが「購入価値の最適化(最小ROAS)」です。
手順1:購入イベントにvalueとcurrencyを送る
ピクセルまたはコンバージョンAPIの購入イベントに、注文金額(value)と通貨(currency)が入っているかをイベントマネージャで確認します。ここが欠けていると、Metaの管理画面に購入ROASが表示されず、価値ベースの最適化も選べません。
手順2:コマースマネージャで価格条件の商品セットを作る
カタログの商品セットは、条件を指定してカタログ内の商品を部分集合にする機能です。「価格が10,000円より大きい」のような価格条件でセットを作れば、それがそのまま高単価商品だけの配信対象になります。Googleのカスタムラベルのように、フィード側に属性を足さなくても管理画面だけで作れるのが手軽な点です。価格のほかカテゴリやブランドとの掛け合わせもできるので、「高単価×主力カテゴリ」のような絞り方も可能です。
手順3:Advantage+カタログ広告の配信対象を商品セットに絞る
広告セットで、カタログ全体ではなく手順2で作った高価格帯の商品セットを配信対象に指定します。カタログ全体のまま配信すると、セクション4で書いたとおり、CVRの高い低単価商品にインプレッションが寄っていきます。新規獲得(プロスペクティング)の配信こそ、商品セットで入口を高単価に絞る価値があります。
手順4:最適化を「件数」から「価値」に変える
広告セットの最適化対象は、既定の「コンバージョン(購入件数)」のままにせず、購入価値の最大化を検討します。あわせて最小ROASを指定すると、「この水準を下回る配信はしない」という下限を機械学習に課せます。Googleの目標ROASが「平均の目標」なのに対し、Metaの最小ROASは「下限」なので、強く効かせすぎると配信量が急減します。最初は現状ROASの少し上に置き、配信量を見ながら段階的に調整してください。
購入イベントの蓄積が少ないアカウントでは、価値最適化の学習が安定しないことがあります。その場合は無理に価値最適化へ切り替えず、商品セットの絞り込みだけでも配信は確実に高単価側へ寄ります。絞り込みが先、最適化の切り替えは後、の順です。
リターゲティングは低価格帯を残してよい
カタログ広告の閲覧リターゲティング(商品を見た人に同じ商品を出す配信)は、本人が見た商品を出すのが仕事なので、低価格帯を無理に外す必要はありません。鉄則が効くのは、まだ商品を知らない人に何を見せるかを媒体が選ぶ新規向け配信です。新規は高単価セット、リターゲティングはカタログ全体、という分け方が収まりがよいです。
カタログ広告やショッピング広告そのものをこれから始める場合は、フィードの整え方から書いた商品数が多いECの広告はMetaカタログ広告とGoogleショッピング広告から始めるべき理由を先に読んでください。
07 この鉄則をそのまま当てはめない方がよいケース
「安い商品を出さず、高い商品を出す」は、1回の注文のROASを引き上げるための鉄則です。前提が変わる商売では、機械的に当てはめると判断を誤ります。
定期購入・リピート消耗品:初回ROASではなくLTVで判断する
サプリや化粧品のような定期型は、初回注文が2,000円でも、継続すれば1人の顧客から数万円の売上になります。ROASは計測期間内の売上しか数えないので、この型の商売で初回ROASだけを見ると、広告を不当に低く評価します。判断軸は初回ROASではなく、顧客獲得単価(CPA)が許容LTVに収まっているかです。この型では「安い入口商品を広告に出す」が正解になり得ます。
同梱・まとめ買いが多い店:売値ではなく注文金額で見る
鉄則の正確な言い方は「売値が高い商品を出す」ではなく「注文金額が大きくなる入口に広告費を使う」です。ROASの分子は商品単価ではなく注文金額なので、1,500円の商品がフックでも、一緒に買われて平均注文額が8,000円になるなら、その商品は広告に出す価値があります。商品別レポートの「その商品経由の注文金額」まで見て判断してください。
高額すぎる商材:計測期間からこぼれる
10万円を超えるような商材は検討期間が長く、クリックから購入までがコンバージョンの計測期間(既定では30日程度)を超えることがあります。この場合、実際には広告が効いていてもROASは実態より低く表示されます。高額商材のROASが低く見えるときは、鉄則が間違っているのではなく、計測が追いついていない可能性を先に疑ってください。
在庫処分・新商品の立ち上げなど、目的がROASでない配信
在庫を現金化したいセール配信や、新商品の初速を付けるための配信は、そもそもROASを問う配信ではありません。目的が違う配信を鉄則で裁かないこと。ただしその場合も、キャンペーンを分けて「ROASを問う配信」と混ぜないのが条件です。混ぜると、どちらの成果も評価できなくなります。
08 売値だけでなく、損益分岐ROASと粗利で確認する
ROASが上がっても、それだけでは利益が出ているか分かりません。ROAS100%は「売上と広告費が同額」、つまり原価分だけ確実に赤字です。広告費を払っても利益が残る最低ラインが損益分岐ROASで、次の式で出ます。
損益分岐ROAS = 100 ÷ 限界利益率(%)
※限界利益率=(売上 − 原価 − 送料・決済手数料など注文ごとの変動費)÷ 売上
たとえば売値10,000円、原価4,000円、送料・決済・梱包で1,500円なら、限界利益率は45%。損益分岐ROASは 100÷0.45 ≒ 222% です。ROAS180%は数字としては悪くなさそうに見えて、この商品では赤字ということになります。
ここで鉄則にもう一段の条件が付きます。売値が高くても、型番商品の薄利競争で限界利益率が15%しかない商品は、損益分岐ROASが667%まで跳ね上がり、広告で利益を出すのがかえって難しい。逆に売値が中程度でも利益率の高いオリジナル商品は、要求ROASが低く済みます。広告費を寄せる先は、正確には「売値が高い商品」ではなく「売値×限界利益率、つまり1注文あたりの粗利額が大きい商品」です。セクション5のカスタムラベルを粗利額で切ることを勧めたのはこのためです。
ROAS目標そのものの決め方と改善手順は、ROAS改善の記事で詳しく扱っています。
09 週次・月次で見る数字と、構成を直す手順
設定を変えたら終わりではなく、配信が意図どおり高単価側に寄っているかを数字で確認し続けます。見る場所は決まっています。
週次:商品別レポートで「広告費を食って売上を返さない商品」を探す
- Google広告はキャンペーンの「商品」タブ、Metaは内訳の商品ID別で、広告費消化の上位20商品を出す
- 商品ごとに広告費・売上・ROASを並べ、「クリックと費用は多いのに売上が小さい商品」を特定する
- 該当商品が低単価帯なら、除外または低価格帯キャンペーンへの隔離を検討する
月次:価格帯ごとの費用配分を確認する
- カスタムラベル別・商品セット別に広告費の配分を集計し、低価格帯に流れている割合を確認する
- 目標ROAS・最小ROASの調整は一度に大きく動かさない。目標を急に引き上げると配信が急減し、学習が崩れる。2割程度の幅で段階的に動かす
- 価格改定や新商品追加のたびに、ラベルや商品セットの条件が追従しているかをフィード側で確認する
1つ補足すると、広告から商品を外すことはサイトから商品を消すことではありません。低単価商品は今までどおりサイトで買えますし、高単価商品の広告から流入した人が回遊して安い商品を一緒に買うことはよくあります。変えているのは店の品ぞろえではなく、広告費という限られた弾をどの入口に撃つかだけです。
FAQ よくある質問
Q1. 安い商品を広告から外すと、全体の売上が落ちませんか?
広告の入口を高単価商品に寄せるだけで、安い商品はサイト上に残り、検索流入や回遊からは今までどおり買えます。落ちるのは「広告費を使って安い商品を売っていた分」で、その広告費が高単価商品に回るため、広告経由の売上は増える方向に働きます。例外は、安い商品が同梱やまとめ買いの入口になっていて注文金額が大きい場合です(セクション7)。
Q2. 高い商品はCVRが低くて件数が出ません。問題ないですか?
ROASは件数ではなく金額で決まるので、件数の少なさ自体は問題ではありません。売値が10倍ならCVRが10分の1未満に落ちない限り、クリック1回あたりの期待売上は高単価商品の方が大きくなります。ただし購入件数が少なすぎると自動入札の学習が安定しないので、キャンペーンの分割は2〜3本に抑えて学習データを確保してください。
Q3. 価格帯はいくらで区切ればよいですか?
一律の金額はありません。基準は「売値×実績CVRが実績CPCを上回るか」と「損益分岐ROASを満たせるか」の2つです。クリック単価100円・CVR1%なら、売値10,000円でクリック1回の期待売上がちょうど100円になります。自社の商品別レポートから逆算して線を引いてください。
Q4. Googleの目標ROASとMetaの最小ROASは同じものですか?
違います。Googleの目標ROASは「平均でこの水準を目指す」目標値で、個々のコンバージョンにはばらつきが出ます。Metaの最小ROASは「下回らないようにする」下限の指定で、強く効かせると配信量が急減します。どちらも購入金額がコンバージョン値として媒体に送られていることが前提です。
Q5. すでに全商品でカタログ広告を配信しています。どこから手を付ければよいですか?
商品別レポートで広告費の上位20商品を出し、商品ごとのROASを確認するのが最初です。費用を使って売上を返していない低単価商品が見つかったら、いきなり除外せず、カスタムラベルや商品セットで価格帯を分けて予算配分を寄せるところから始めると、学習への影響を抑えられます。
11 まとめ
ECの広告でROASを上げる鉄則は、安い商品をなるべく広告に出さず、売値が高い商品、正確には1注文あたりの粗利額が大きい商品に広告費を寄せることです。クリック単価は売値に比例しないのに売上は売値がそのまま効く、という構造上の非対称が根拠なので、入札やクリエイティブの調整より先に効きます。
実装は4つの作業に落ちます。①購入金額をコンバージョン値として媒体に送る、②Googleはカスタムラベル、Metaは商品セットで価格帯を区分する、③低価格帯への配信を除外または隔離する、④目標ROAS・最小ROASで機械学習の物差しを件数から金額に変える。このとき、定期購入型はLTVで、同梱が多い店は注文金額で判断を切り替えること、そしてROASではなく損益分岐ROASと粗利で最終確認することを忘れないでください。
まずは今週、商品別レポートを開いて、広告費の上位20商品それぞれの「売値×CVR」とCPCを並べてみてください。クリックするたびに赤字になっている商品が1つでも見つかれば、この記事の設定を入れる価値があります。自社のカタログ構成でどう区切るべきか迷う場合は、お問い合わせからご相談ください。