作った覚えのない動画広告がYouTubeに流れる理由P-MAXの自動生成動画とストックBGMを止める、たった一つの方法

動画は1本も入稿していないはずなのに、YouTubeで自社の商品画像が動き回り、聞いたことのないBGMが流れている。クライアントから「あの音楽は誰が決めたんですか」と聞かれて、はじめて気づく——P-MAXを運用していると、わりとよく起きる出来事です。犯人は広告代理店でも制作会社でもなく、Googleの自動生成機能です。この記事では、まず「なぜ勝手に動画ができるのか」を仕組みから説明し、そのうえで私たちが実際に試した3つの手(設定でオフにする/消す/配信面を外す)がすべて空振りに終わった経緯と、最終的に効いた対処法を共有します。

00 はじめに

広告運用の相談で、ここ1年ほど急に増えた質問があります。

「うち、動画広告って出してましたっけ?」

クライアントがスマートフォンでYouTubeを見ていたら、自社の商品画像がスライドのように切り替わる短い広告が流れた。しかも、社内の誰も知らないBGMが付いている。制作会社に頼んだ覚えもなければ、広告代理店から動画の見積もりが来た記憶もない。それでも確かに、自社の商品名とロゴが入った動画広告がYouTubeで再生されている——という相談です。

結論から書きます。それはGoogleが自動で作った動画です。P-MAX(パフォーマンス最大化キャンペーン)のアセットグループに動画が1本も入っていないと、Googleは登録済みの画像・見出し・説明文・ロゴを材料に動画を組み立て、YouTubeを含む動画面へ配信します。BGMもGoogle側が勝手に選びます。そして厄介なことに、この挙動は設定画面のスイッチでは止められません

本記事は、この現象に実際に当たった案件で、私たちが順番に試したことの記録です。「自動作成アセットをオフにする」「生成された動画を削除する」「YouTube面を配信対象から外す」——広告運用の担当者なら誰もが最初に思いつくこの3つが、なぜいずれも解決策にならないのかを説明します。そのうえで、実務として何をすれば確実に止まるのかを手順まで落とします。

なお、この記事で扱うのは「Googleが勝手に動画を作って配信する」現象への対処です。動画広告そのものの設計や、YouTube広告のフォーマット要件については別記事にまとめてありますので、そちらを参照してください。

01 そもそも「自動生成動画」とは何か|入稿していない動画が流れる仕組み

用語の整理から始めます。広告運用に詳しくない方や、P-MAXを最近触りはじめた方でも読み進められるように、前提を丁寧に置きます。

P-MAXは「1つのキャンペーンで全部の面に出す」仕組み

P-MAX(Performance Max/パフォーマンス最大化キャンペーン)は、Googleが提供する広告メニューのひとつです。従来は検索広告、ディスプレイ広告、YouTube広告、ショッピング広告……とキャンペーンを分けて作っていたものを、P-MAXでは1つのキャンペーンにまとめ、どの面にどれだけ配信するかをGoogleの機械学習に任せます。

広告主が用意するのは「アセット」と呼ばれる素材です。見出し(短い文言)、説明文、画像、ロゴ、動画、そしてリンク先URL。これらをアセットグループという単位でまとめて登録すると、Googleがその中から組み合わせを作り、検索結果・YouTube・Gmail・Discover・ディスプレイ・マップへ配信していきます。

アセットグループとは:1つのテーマ(商品カテゴリ、サービス、キャンペーン施策など)ごとに、見出し・説明文・画像・ロゴ・動画をひとまとめにした入れ物のこと。1つのP-MAXキャンペーンの中に複数作れます。従来型キャンペーンでいう「広告グループ+広告」に近い役割ですが、配信面が固定されていない点が大きく違います。

動画を入れないと、Googleが作る

ここが本題です。P-MAXは動画面(YouTube)にも配信されるため、システムとしては動画アセットが必要になります。ところが多くの広告主、とくに中小企業や地域の店舗では、動画素材そのものを持っていません。バナー画像は制作していても、動画は予算的にも制作体制的にも後回しになりがちです。

そこでGoogleは、動画アセットが登録されていないアセットグループについては、既存のアセットから動画を自動生成するという設計をとっています。商品画像が数枚あって、見出しがあって、ロゴがあれば、それらを切り替えながら表示する10秒前後の動画は機械的に作れます。実際に生成されるのは、次のような構成のものです。

  • 登録済みの画像が数枚、ズームやスライドの動きを付けて順番に表示される
  • 見出しや説明文がテキストとして重なる
  • 末尾にロゴとリンク先ドメイン、行動を促すフレーズが出る
  • 全体を通してBGMが流れる(Google側が選んだストック音源)

広告としての体裁は整っています。整っているからこそ、クライアントは「誰かが作ったもの」だと思い込み、代理店に「あの動画は誰が作ったんですか」と聞くことになります。

「良かれと思って」の機能であることは間違いない

この機能自体は悪意で作られたものではありません。動画面に配信できるのに動画がない状態は、機械学習にとって明確な機会損失です。実際、自動生成動画が入ることでインプレッションが伸び、認知の総量が増える案件はあります。Googleの立場からすれば、素材不足で配信できない広告主を救済する仕組みという整理でしょう。

問題は、それが広告主の合意なしに、ブランドの外見と音を決めてしまう点にあります。次章で、なぜBGMが特に問題になるのかを掘り下げます。

02 なぜBGMが問題になるのか|音は設定項目ではなくブランドの一部

「BGMくらい気にしなくてもいいのでは」と思われるかもしれません。実務では、そうもいきません。相談を受けた案件で実際に問題になったのは、次のような論点でした。

① ブランドトーンとの不一致

落ち着いた高価格帯の商材に、明るく軽快なポップスが乗る。医療・士業・冠婚葬祭のように厳粛さが求められる領域に、量販店のセール告知のような音楽が付く。広告の文言はどれだけ推敲しても、音が全部持っていってしまいます。視聴者の記憶に残るのは、テキストよりも音と動きです。

② 「誰が決めたのか」を説明できない

クライアントから見れば、広告に流れる音楽は誰かが選んだ結果です。代理店に聞いて「Googleが自動で付けています」と返ってきても、それは説明であって納得ではありません。しかも運用者側が仕組みを把握していないと、「調べます」と言ったきり回答が遅れ、信頼を落とします。説明できない自動化は、自動化のメリットより先に信頼のコストを発生させます。

③ 音の使用可否が業界ルールと衝突することがある

業種によっては、広告表現のガイドラインで音楽や効果音の扱いが定められていることがあります。自社で使う音源のライセンスを厳密に管理している企業であれば、素性の分からない音源が自社名義の広告に乗っている状態そのものが問題になります。Googleが用意した音源である以上、配信上の権利処理は媒体側で完結していますが、社内規程に照らして是非を判断できないという事実は残ります。

④ 品質を評価する土俵に乗らない

自動生成動画は、広告主のクリエイティブ改善サイクルの外側にあります。訴求を変えたい、尺を変えたい、冒頭2秒を差し替えたい——そうした通常のクリエイティブ改善が一切効きません。数字が悪くても、打ち手が「消す」しかない。運用改善の対象にならない配信が、広告費を消費し続ける状態になります。

よくある誤解

「動画面の消化が少ないから実害はない」——これは危険です。P-MAXのチャネル別内訳は管理画面から完全には分解できず、YouTube面にどれだけ使われたかを正確に把握するのは容易ではありません。少額だから放置してよい、という判断そのものが、根拠のない見積もりの上に立っています。

つまりこれは「気になる人だけ対応すればいい細かい話」ではなく、ブランドの見え方と説明責任の話です。だから止めにいきます。

03 検証①|自動作成アセットを全部オフにしても止まらない

最初に試すのは、当然ながらキャンペーン設定です。Google広告には「自動作成アセット」という設定群があり、Googleが素材を自動で作る挙動をオン・オフできます。名前だけ見れば、これを全部オフにすれば止まりそうに思えます。

設定できる5種類と、それぞれの実際の役割

オン・オフできる項目は、大きく次の5つです。それぞれが実際には何をする機能なのかを、並べて確認してみます。

設定名実際に何をする機能か動画0本からの自動生成を止められるか
テキストの自動生成リンク先ページの内容などから見出し・説明文を自動で作る止められない(テキストの話)
リンク先ページのプレビュー生成リンク先ページの見た目を画像として広告内に表示する止められない(画像の話)
縦型動画の生成入稿済みの横型動画から縦型(9:16)版を作る止められない
短尺動画の生成入稿済みの長尺動画から短い版を作る止められない
動画の訴求強化入稿済みの動画に加工を加えて見せ方を強める止められない

表の右列を見れば、答えは見えています。とくに紛らわしいのが動画まわりの3つです。「動画」と名前が付いているので、多くの運用者が「動画を勝手に作る機能だからここをオフにすればいい」と解釈します。ところが実際は、すでに広告主がアップロードした動画を短尺化・縦型化・加工するための機能です。素材が手元にある前提の、加工系の設定なのです。

言い換えると、この5つはどれも「広告主が出した素材を、Googleが手を加えて増やす」機能です。素材がゼロの状態から作り出す挙動は、ここに含まれていません。だからオフにしても効きません。

実際に全部オフにして確認したこと

検証した案件では、2つのアカウントにまたがる稼働中のP-MAXキャンペーンについて、この5つをすべてオフにしました。1つのキャンペーンだけ設定が未指定(=初期状態のままオン)だったので、他と揃えて明示的にオフへ変更し、変更後に設定画面を開き直して反映も確認しています。

検証時の状態

  • 対象:2アカウント/稼働中のP-MAXキャンペーン
  • 自動作成アセット:5つすべてオフ(設定後に開き直して反映確認済み)
  • 結果:それでも各アセットグループに自動生成の動画アセットが存在し続けた

つまり、自動作成アセットの設定と、動画0本のアセットグループにGoogleが動画を作る挙動は別系統です。前者は「広告主の素材を拡張する機能のオン・オフ」であり、後者は「配信可能な動画がないときの補完」です。名前が似ているせいで同じものに見えますが、設定を全部オフにしても後者は残ります。

それでもやる価値はある

自動生成動画は止まりませんが、自動作成アセットをオフにすること自体は無駄ではありません。テキストの自動生成は訴求のブレを生みますし、縦型・短尺の自動加工は意図しない切り取りを生みます。ブランド管理を厳密にやる案件では、5つをオフにしておくのはやっておくべき初期設定です。ただし「これで動画が止まる」という期待だけは持たないでください。

04 検証②|消しても、またすぐ作られる

設定で止まらないなら、生成されたものを消せばいい。次に試したのがこれです。

削除自体はできる。ただし手作業で、しかも一時的

Google広告の管理画面でアセットグループの編集画面を開き、動画の一覧から自動生成されたものを削除する——この操作自体は問題なく通ります。「消せない」わけではありません。

問題は2つあります。1つは、アセットグループを1件ずつ開いて消していく手作業になること。アセットグループが10件、20件とある案件では、それだけで半日仕事になります。

もう1つは、そちらのほうが深刻です。消しても、また作られます。削除した結果そのアセットグループの動画が再び0本になれば、Googleは前章と同じ理由でまた動画を作ります。実際、消した数日後に見に行くと、別の自動生成動画が入っています。

やってはいけない運用

「毎月チェックして、見つけたら消す」を運用ルールにすること。工数が毎月積み上がるうえ、担当者が変わった瞬間に止まります。再発する対処は、運用手順書に載せてはいけません。載せるべきなのは、再発しない対処だけです。

「原因を消していない」から終わらない

この段階で気づいておきたいのは、自分がやっているのが原因への対処ではなく、症状の除去だという点です。設定でオフにする(前章)も、消す(本章)も、Googleが動画を作る理由そのものには触れていません。理由が残っている限り、何度でも起きます。

では理由は何なのか。答えは第6章で整理しますが、その前にもう一つ、多くの運用者が思いつく手を潰しておきます。

05 検証③|P-MAXからYouTube面だけを外すことはできない

3つ目の発想は、動画そのものではなく配信面を止めるアプローチです。「YouTubeに配信しなければ、動画が作られても実害はない」という考え方で、これも自然な発想です。

P-MAXにチャネル制御の概念はない

結論として、これもできません。P-MAXは「Googleの全面に横断配信し、配分は機械学習が決める」ことを前提に設計されたキャンペーンタイプです。検索だけに寄せる、動画だけを外すといったチャネル単位で配信をオフにする設定そのものが用意されていません。キャンペーン設定をどれだけ探しても、「YouTubeには出さない」というチェックボックスは見つかりません。

P-MAXで公式にできる配信制御は、次のように限定的です。

やりたいこと可否代替手段
YouTube面だけ配信を止める不可なし(キャンペーンタイプの変更を検討する)
特定のYouTubeチャンネル・動画への表示を防ぐ一部可アカウント単位のコンテンツ除外・プレースメント除外
特定のトピック・センシティブな内容を避けるアカウント単位のコンテンツ適合性設定
特定の検索語句での表示を防ぐアカウント単位の除外キーワードリスト
ブランドを指定して除外・限定するブランドリスト

ブランドセーフティの観点で「どこに出るか」を絞る手段は用意されていますが、「動画面に出るかどうか」自体を選ぶ手段はない、という整理になります。

キャンペーンタイプを変えるという最終手段

どうしても動画面に一切出したくないのであれば、P-MAXをやめて検索キャンペーンやショッピングキャンペーンに戻すという選択肢が残ります。ただしこれは、P-MAXで得ている配信量と学習を手放す判断です。BGMを止めるために獲得の主力を止めるのは、多くの場合で本末転倒でしょう。次章以降で説明する対処のほうが、はるかに現実的です。

06 分かったこと|引き金は「動画が0本のアセットグループ」

3つの検証を並べると、構造が見えてきます。

  • 設定でオフにできるのは「入稿済み素材の加工・拡張」であって、素材ゼロからの補完ではない
  • 生成された動画は管理画面から手作業で消せるが、条件が変わらなければまた作られる
  • 配信面そのものを外す設定はP-MAXに存在しない
  • したがって、変えられる変数は「アセットグループに動画が入っているかどうか」だけ

Googleの動作原理はシンプルです。動画面に配信できるのに、配信する動画がない。だから作る。——であれば、配信する動画を用意してしまえば、作る理由が消えます。

「1本でも入っていれば作られない」という前提の確認

動画アセットが登録されているアセットグループでは、Googleが新たに動画を自動生成することはありません。ここで注意したいのは、判定の単位がキャンペーンではなくアセットグループである点です。同じキャンペーンの中に10個のアセットグループがあり、そのうち9個に動画を入れても、残り1個が空であれば、その1個には自動生成動画が入ります。

取りこぼしが起きる典型パターン
  • 後から追加したアセットグループに動画を入れ忘れる
  • 商品カテゴリごとにアセットグループを増やす運用で、増設分だけ空になる
  • 一時停止していたアセットグループを再開したときに動画がない
  • アセットグループを複製したつもりが、動画アセットだけ引き継がれていない

つまりこの対処は「一度やって終わり」ではなく、アセットグループを作るたびに動画を入れるという運用ルールとセットにして、はじめて完成します。

07 唯一の恒久対策|自前の動画を全アセットグループに入れる

やるべきことは一つです。稼働中のすべてのアセットグループに、自社の動画を1本以上入れる。これで自動生成は起きなくなり、BGMも広告主が決めたものだけになります。

「立派な動画」を作る必要はない

ここでよく起きるのが、制作の話に膨らんで止まってしまうパターンです。撮影の企画、絵コンテ、ナレーション、予算承認——そこまで積み上げると、着手までに数週間かかります。その間ずっと自動生成動画は流れ続けます。

目的は「自動生成を止めること」であって「動画広告で成果を出すこと」ではありません(もちろん後から成果を狙う動画へ差し替えていけばよい)。まずは既存の画像アセットを並べただけの、無音のスライドショー動画で十分に成立します。追加の素材はゼロ、当日中に用意できて、音は一切鳴りません。

最短ルート

アセットグループにすでに登録してある商品画像を、そのまま数秒ずつ切り替えるだけの無音動画を作る。ロゴと見出しを焼き込めば、自動生成動画と見た目の情報量は変わらず、音だけが消えます。ブランド指定のBGMを乗せたい場合は、音源が確定してから差し替えれば済みます。

用意する本数とサイズ

最低条件は各アセットグループに1本ですが、配信面の網羅性を考えると次の3種を用意するのが現実的です。

アスペクト比解像度の目安主な配信面
16:9(横型)1920×1080YouTubeのインストリーム、PC視聴
9:16(縦型)1080×1920YouTube ショート、スマートフォンの縦持ち視聴
1:1(スクエア)1080×1080フィード面、各種インフィード配信

長さは10秒以上を目安にします。動画はYouTubeへアップロードし、そのURLをアセットグループに登録する形になるため、公開設定は「限定公開」以上にしてください。非公開のままだと登録できません。詳細なフォーマット要件はP-MAXの仕様とアセット要件をまとめた記事で確認できます。

無音スライドショーの作り方

特別なツールは要りません。日常的に使っているもので十分です。

  • パワーポイント/Googleスライド:画像を1枚1スライドで並べ、自動切り替えを3秒に設定して、動画として書き出す。BGMを入れなければ無音になります。
  • Canvaなどのデザインツール:動画テンプレートに画像を差し込み、音楽を選ばずに書き出す。16:9・9:16・1:1のサイズ変更もその場でできます。
  • スマートフォンの動画編集アプリ:画像を選んでスライドショーにするだけ。既定でBGMが付く場合があるので、音量をゼロにするか音楽トラックを外します。

画像を4枚×3秒で12秒、5枚で15秒。これで「10秒以上」という条件は自然に満たせます。凝った演出は不要です。目的は自動生成の引き金を外すことであり、この時点でクリエイティブの巧拙を競う必要はありません。

書き出し時の注意

編集ツールが気を利かせて既定のBGMを入れてくることがあります。せっかく音を止めるために作っているのに、別の知らない曲が乗っては本末転倒です。書き出したファイルは必ず一度再生して、無音であることを耳で確認してください。ブランド指定のBGMを乗せる場合も、音源のライセンスは事前に確認を。

登録は管理画面から。件数が多いときは分担する

動画をYouTubeにアップロードしたら、あとは各アセットグループの編集画面を開き、動画アセットとしてURLを追加していくだけです。1件あたり数分で終わります。

アセットグループが数十件ある場合は、キャンペーン単位で担当を分けて一気に片付けるのが現実的です。途中で止めると「入れたもの」と「入れていないもの」が混在して、あとで確認が面倒になります。始めたら最後まで通してください。

登録の流れ:動画をYouTubeへアップロード(限定公開以上)→ アセットグループの編集画面を開く → 動画の欄にYouTubeのURLを追加 → 保存 → 一覧に戻って動画が入ったことを確認。

08 対応手順|棚卸しから登録・確認までの5ステップ

実務としての進め方を、順番に落とします。

  1. 稼働中のアセットグループを全件洗い出す。キャンペーンが一時停止でも、アセットグループが有効なら対象です。「キャンペーン名/アセットグループ名/現在の動画アセット数」の3列で一覧を作ります。動画数が0の行が、そのまま作業対象になります。
  2. アセットグループごとに使える画像を確認する。すでに登録済みの画像アセットをそのまま素材にできるかを見ます。テーマがはっきり分かれているアセットグループなら、動画も分けたほうが訴求は合いますが、まずは共通の1本を全体に入れて自動生成を止め、あとから個別最適していく順序で構いません。
  3. 動画を書き出し、YouTubeへアップロードする。16:9/9:16/1:1の3種、10秒以上、限定公開以上。アップロード後のURLを、ステップ1で作った一覧に追記しておきます。
  4. 各アセットグループに動画を登録する。ステップ1で作った一覧を上から順に潰していきます。どこまで終わったかを一覧にチェックを入れながら進めると、担当が分かれても取りこぼしません。
  5. 全件そろったかを確認する。ステップ1の一覧に空欄が残っていないかを見ます。そのうえで数日〜1週間後にもう一度アセットグループを見に行き、新しい自動生成動画が追加されていないことを確かめてください。ここまでやって完了です。

すでに入ってしまった自動生成動画をどうするか

自前動画を入れても、過去に生成された動画アセットが自動的に消えるわけではありません。これは管理画面から手作業で削除します。順序としては、先に自前動画を入れてから、自動生成動画を削除するのが正解です。逆にすると、削除した瞬間に動画0本の状態が生まれ、再生成の引き金を自分で引くことになります。

正しい順序

①自前動画を全アセットグループに登録する → ②全件入ったことを確認する → ③自動生成動画を削除する → ④後日、再発していないかを確認する

運用ルールとして固定する

前章で触れたとおり、この対処はアセットグループを増やすたびに必要になります。次のような形で、作業手順そのものに埋め込んでください。

  • アセットグループ新規作成の手順書に「動画アセットの登録」を必須項目として入れる
  • 月次のアカウント点検項目に「動画アセット数0のアセットグループがないか」を追加する
  • アカウントを引き継ぐとき、この確認を引き継ぎチェックリストに入れる
  • 自動作成アセット5つのオン・オフ状態も、あわせて点検項目にする

クリエイティブの管理ルール全般については、広告クリエイティブの刷新ルールをまとめた記事もあわせて参考にしてください。

09 クライアントへの説明と、社内で決めておくルール

技術的な対処と同じくらい大事なのが、説明です。「Googleが勝手にやっています」だけで終わらせると、運用体制そのものへの不信につながります。

説明はこの3点セットで足りる

  1. 何が起きているか:動画素材が登録されていないと、Googleが既存の画像・文言から動画を自動生成し、BGMを付けて配信する仕様がある。
  2. なぜすぐ止められなかったか:設定でのオフ、システムからの削除、配信面の除外をそれぞれ試したが、いずれも仕様上できないことを確認した。
  3. どうするか:自社の動画を用意して全アセットグループに入れる。無音でも成立するので、まず止めることを優先し、そのうえで訴求に合った動画へ育てていく。

ポイントは、試したことを具体的に言えることです。「調べたけどできませんでした」と「この3つを試して、それぞれこういう理由でできないと確認しました」では、受け取られ方がまったく違います。

これを機に決めておきたいこと

自動生成動画の一件は、突き詰めると「自動化にどこまで任せるか」を決めていなかったことの表れでもあります。P-MAXに限らず、媒体側の自動化は今後も増えます。案件ごとに、次の線引きを事前に合意しておくと、同種の問い合わせが起きたときに揺れません。

領域任せてよい範囲人が握る範囲
配信配分面ごとの予算配分、入札キャンペーン構成、予算総額
テキスト組み合わせの最適化見出し・説明文の文言そのもの
画像・動画サイズの自動トリミング使用する素材、音、ブランド表現
ターゲティング類似拡張、シグナルの活用除外、ブランドセーフティ設定

この表の「人が握る範囲」に該当することが、広告主に無断で自動化されていないか。P-MAXの自動生成動画は、まさにその境界線上で起きた出来事でした。P-MAXの成果の見え方そのものに疑問がある場合は、チャネル別パフォーマンスの見方を整理した記事もあわせて読むと、判断材料が増えます。

10 まとめ

入稿していない動画広告がYouTubeで流れ、知らないBGMが鳴る。この現象について、この記事で整理したことをまとめます。

  • 正体は、P-MAXのアセットグループに動画がないときにGoogleが自動生成する動画。BGMもGoogle側が選ぶ。
  • 自動作成アセットの5つは「入稿済み素材の加工・拡張」の設定であり、すべてオフにしても自動生成は止まらない。
  • 生成された動画は管理画面から手作業で消せるが、動画が0本に戻ればまた作られる。消す運用は終わらない。
  • P-MAXにはチャネル単位で配信をオフにする設定がなく、YouTube面だけを外すこともできない。
  • 確実に止める唯一の方法は、稼働中の全アセットグループに広告主自身の動画を入れること。無音のスライドショーでも成立する。
  • 順序は「自前動画を入れる → 検証 → 自動生成動画を削除」。逆にすると再生成を招く。
  • アセットグループを増やすたびに必要になるため、運用ルールとして手順書に埋め込む。

媒体の自動化は、素材が足りない広告主を助ける方向に働きます。それ自体は悪いことではありません。ただし助けられる範囲を決めるのは、本来は広告主のほうです。任せる範囲を自分で決められる状態にしておくことが、自動化と付き合う唯一の方法だと私たちは考えています。動画を1本入れておく、というだけの話が、その入口になります。

なお、本記事の内容は2026年9月時点で私たちが確認した挙動に基づいています。媒体の仕様は変わりますので、実際に対応される際は最新のヘルプもあわせてご確認ください。

11 よくある質問(FAQ)

Q. 動画を入稿していないのに、YouTubeで自社の動画広告が流れているのはなぜですか?

P-MAXのアセットグループに動画が1本も登録されていない場合、Googleが登録済みの画像・見出し・説明文・ロゴを組み合わせて動画を自動生成し、YouTubeを含む動画面へ配信するためです。広告主が動画を作っていなくても配信されます。

Q. 自動生成された動画のBGMは誰が選んでいますか?

広告主ではなくGoogle側です。ストック音源が自動で付与され、曲調やテンポを広告主が指定することはできません。ブランドの世界観と合わない音楽が鳴るのはこのためです。

Q. 自動作成アセットの設定をすべてオフにすれば止まりますか?

止まりません。自動作成アセットの5つは、広告主がすでに入稿した素材を加工・拡張する機能です。動画が0本のときにGoogleが動画を作る挙動とは別のものなので、すべてオフにしても自動生成動画は入り続けます。実際に、稼働中のキャンペーンをすべてオフにした状態でも自動生成動画が存在することを確認しています。

Q. 生成された動画を消せば解決しますか?

一時的にしか解決しません。管理画面から削除すること自体はできますが、アセットグループの動画が0本に戻れば、また作られます。しかもアセットグループを1件ずつ開く手作業になるため、毎月の点検項目にすると工数が積み上がります。

Q. YouTubeの配信面だけを外すことはできますか?

できません。P-MAXは全面横断配信を前提としており、チャネル単位で配信をオフにする設定は用意されていません。ブランドセーフティ目的でプレースメントやコンテンツを除外することは可能ですが、動画面そのものを止めることはできません。

Q. 用意する動画は何本、どのサイズが必要ですか?

最低条件は各アセットグループに1本です。配信面の網羅性を考えると、16:9・9:16・1:1の3種を用意するのが現実的です。長さは10秒以上を目安にし、YouTubeへ限定公開以上でアップロードしてから紐付けます。

Q. 凝った動画を作る予算がありません。どうすればよいですか?

既存の商品画像を数秒ずつ切り替えるだけの無音スライドショーで十分です。追加素材は不要で、当日中に用意できます。まず自動生成を止めることを優先し、成果を狙う動画は後から差し替えていく順序をおすすめします。

Q. P-MAXのアセット設計から相談できますか?

もちろんです。アセットグループの棚卸し、動画素材の用意、登録作業、配信後の確認、そして日々の広告運用まで、私たち「でもやるんだよ」(零株式会社)が無料でご相談を承っています。まずはお気軽にお問い合わせください。

「媒体が勝手にやったこと」を説明できる広告運用を

自動化の挙動を検証し、止められるものは止め、止められないものは代替策まで用意する。分からないことを分かる状態にする運用を、でもやるんだよがお手伝いします。

✉️ 無料相談を申し込む